メキシコってどんな所?
そまちひろさんが1ヶ月滞在したメキシコを紹介します。

メキシコで、時計と約束はあって無いようなもの

2016/01/13

ラテンの国メキシコでは、時間の感覚というものがとってもゆるいです。例えば、友達と待ち合わせしていて、相手が30分遅れてきたとしても、ムっとした様子を見せるのは「クールじゃない」とされています。なので、みんなまったく遅刻に対する罪悪感がなく、全員が全員遅刻するのがあたりまえ、のような世界です。

これは別に個人対個人に限った話ではなく、映画や公的なイベントなんかも、時間ぴったりに始まることはまずありません。公にされている時間はあくまで「目安」なのです。なので、その「目安」に縛られて目くじらを立てていたら、こっちの身が持ちません。

そのため最近では、例えば「○時にパーティーが始まるから来てね」と言われても、必ず30分〜1時間遅れていくようにしています。こうすればじりじり待つ必要も、腹を立てる必要もないですから。

ただ、たまに「全員そうやって自衛するから、誰も時間を守らなくなるんじゃ・・・」と、にわとりが先か、卵が先か、的な考えが浮かびますが。

こんな調子なので、時計を街中で見かけることはまずありません。レストランや雑貨屋さんはおろか、銀行や病院など「あってもいいんじゃない?」という施設にも、時計がないのです。

さらに、ごくたまに時計を見かけても、大概時間が狂っています。大通りに面した立派な建物の大時計でさえ、誰も気にしないのか、狂いっぱなしなんですよ。大らかさもここまで来るとあっぱれです。

それから、「約束」の定義もかなり曖昧です。これも日本人からしたらかなりびっくりするのですが、「○日○時に、どこそこへ行こう」とはっきりした取り決めをしていても、連絡なしで平気ですっぽかすメキシコ人多し、です。初めはわたしも「どうして来なかったの?」と怒っていましたが、どうやら約束というのは「達成目標」みたいなもので、何かの都合で達成できなかったら仕方がない、くらいのものみたいです。

ただ、全員がきっちり時間と約束を守って、うっかり守れなかったときに責められる社会よりは、みんなが迷惑かけつつかけられつつ融通し合って、リラックスして過ごせる社会の方が、自分の性には合っているなあと、最近よく思います。

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ライタープロフィール

そま ちひろさん/女性/年齢:30代/中南米(2013年現在)/フリーライターおよび翻訳業。お気に入りの国はインド、住んでみたい国はスペイン、そして現在は南米を縦横断中、という矛盾だらけの人生を満喫しています。著作に「ヘラクレイトスの水」(大宰治賞2009収録)。