- 小説の書き方
- 「週刊小説」(現在廃刊)のショートストーリー賞に入賞したことのあるMUMUさんの小説の書き方・体験記を紹介します。
書いた小説の紹介
2012/10/03
銭と薄紅色の空
タイトルにあげました小説は、短編、ないしは掌編小説の分類になると思います。四百字原稿で二十枚ほどの作品です。実業日本之社の小説雑誌、「週刊小説」(現在廃刊)のショートストーリー賞に入賞した作品です。
ストーリーは、近未来のお話で、離婚したさいに保険が支払われるというユーモア小説です。未来の日本では離婚する夫婦が急増し、それが原因で景気にも悪い影響をあたえていると危惧した政府の政策で、保険会社に補助金をだして「離婚保険」をつくる事になったのです。保険会社の営業マンがやって来て、倦怠期の夫婦の家に訪れます。営業マンの説明によると、離婚をせずに満期になると、三倍の満期返戻金がでるとの事。夫は乗り気ではなく断ろうとしますが、妻は乗り気でさっそく保険に加入してしまいます。妻は返戻金をもらったら離婚するつもりでした。その二十五年後、満期が一週間後に迫っていたそのときでした。離婚保険をウリにしていた保険会社が倒産し、妻のもくろみがはずれてしまうのです。落ち込んでいる妻をみていた夫は、これからも一緒に暮らしていこうと声をかけるのです。そして妻も思いなおします。銭のようにみえていた妻の顔が、薄紅色に染まった空のようにみえてきた、というお話です。
選者の先生は、夫が妻を冷酷にせせら笑うようなオチの方がよかったと評していました。読んでくれた身内や友人もおなじ意見でした。あそこまで馬鹿にされ、ないがしろにされた夫が妻に優しく接するというのはありえない、というわけです。そのあたりに、私の性格がでてしまうのですね。もともと私の作風はハッピーエンドが多いのです。人の人生も最後は辛いことを乗り越えて報われるものであって欲しいと思っているので、小説でもそうしたオチにするパターンが多いのです。私もほんとうはずっと我慢して来た夫が最後に妻を馬鹿にして笑うというオチという構成で書きはじめたのですが、オチの部分を書き始めると、なんとなく妻が哀れに思えてくるという、小説のキャラに感情移入をしてしまったのです。
「銭と薄紅色の空」は、もともとは「離婚保険」というショートショート小説でした。自分でもおもしろい発想だと思い、少し長い物語にした作品でした。一般的な保険の資料を集めて、保険の一般的な事柄と相違がないようにしました。入賞作品と呼ばれるものはこの作品だけで、あとは入選だけです。それだけに思い出深い作品です。
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MUMUさん/男性/年齢:50代/新潟県在住/神社が好きで日本各地をまわっています。趣味でボーカロイドでの音楽作りやギターでオリジナルの歌をつくり、ときどきライブもしています。自分らしく生きることをモットーにしています。