小説の書き方
「週刊小説」(現在廃刊)のショートストーリー賞に入賞したことのあるMUMUさんの小説の書き方・体験記を紹介します。

小説を書いていて大変だったこと

2012/09/21

クレームをいただきました

大変だったというところまではいきませんが、困ったことはあります。小説に関してはプロの作家ではないので、プロならではの大変さはありません。締め切りも自分で決めて書きますし、編集者さんからこのような小説を書いてくださいといった依頼もありません。

私が書いたショートショート小説のなかに、「解脱マニュアル」という作品があります。解脱、いわゆる悟りに到達したい男が宗教のさまざまな修行をしてやがて地獄に逝きますが、閻魔さまから叱られ、罰として生まれかわらせられるのです。生きているあいだ、なにかとクレームをつけ、文句ばかりを言って、嫌われ者だった男に、閻魔さま曰く、男のしていた修行や修法は日本に伝わってくるあいだに誤訳され、大幅に変更されて伝わってしまったことを伝えられます。

私は主人公をあえて男性として書きましたが、弟が私に無断でこの作品を携帯サイトにアップしたのです。アップしてくれたのは感謝感激でしたが、主人公を女性に書き換えていたのです。そのため、サイトをみていた女性から、クレームが来たと話していました。女性を傷つけないという私のポリシーで、悪役的なキャラの場合、主人公は男性にするようにしています。

もうひとつは、講談社さまの「小説現代」のショートショート・ベスト5というコーナーがあり、私の「日本人間」という作品が入選して掲載されることになりました。そのさい、一部、表現方法が不適切なので変更したいという電話が、編集者さんから来たのです。結果、「ジプシーのようにさまよう」ではなく、「さまようように」へと変更になりました。いわゆる自主規制です。出版社の人たちがどれくらい表現に神経を使っているのかを実感した経験でした。

「解脱マニュアル」で書きたかったメッセージは、なんでもクレームをつける人たちに、少しは考えて欲しいということでした。いつからなのか、どんなことでもクレームをつけてくる人たちが急増してきています。webでもなにかとすぐに炎上してしまいます。出版社やテレビ局、さまざまな会社も、お客さまの意見や苦情を受けつける職務ができるほど、なかなかやりづらい世の中になったものです。

以前、筒井康隆さんが、言葉狩りされていることに怒り、断筆宣言をしたこともあります。私も「自主規制の果て」というショートショートを書いてみました。冗談半分で書いたものでしたが、私の作品集を出版するさい、編集者の方のお気に入りの作品だと言われ、苦笑したことがありました。編集者さんも、自主規制にはうんざりしていたのかもしれません。自主規制は音楽の世界でもあり、いままで発売禁止や放送禁止になった楽曲は多々あります。現在、議論が沸騰している原発問題に関しての楽曲も以前、問題になったことがあります。RCサクセションが、原発はいらないという内容の歌を収録したCDが、所属していたレコード会社から発売出来なくなり、キティレコードから発売されたこともありました。

現在は、差別用語として認定されたもののほんの一部として、百姓は農家。漁師は漁民。看護婦は看護師としています。自主規制が厳しくなり、刺激的な、おもしろい作品は姿を消し、無難な作品だけが映画やテレビ、小説誌に掲載されるようになれば、視聴者や読者は激減していくのは必然です。とても残念な風潮だと思います。

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ライタープロフィール

MUMUさん/男性/年齢:50代/新潟県在住/神社が好きで日本各地をまわっています。趣味でボーカロイドでの音楽作りやギターでオリジナルの歌をつくり、ときどきライブもしています。自分らしく生きることをモットーにしています。