小説の書き方
「週刊小説」(現在廃刊)のショートストーリー賞に入賞したことのあるMUMUさんの小説の書き方・体験記を紹介します。

小説を書くにあたって影響を受けた本

2012/09/28

星新一ワールド

小学生の頃に作文で作家になることが夢ですと書きました。作家ですから、小説やエッセイなど、もの書き全般を意味していました。読む本はさまざまなジャンルの小説、ノンフィックション、伝記など、今でも乱読しています。小説に関しては、ショートショートの生みの親である星新一の本を読み、これなら自分でも書けるのではないかと錯覚し書き始めました。ショートショートを書きはじめる影響を受けた本は、星新一の、「ボッコちゃん (新潮文庫) 」という本でした。ショートショートは、枚数も少ない小説で、人や情景の描写もわずかです。ときにはあらすじだけのようになってしまいがちです。ですが、星新一の作品は、私の想像力をふくらませて、歯痛の時でも、読んでいるあいだは痛みを忘れてしまうほどのめり込んで読んでいました。

私が影響を受けたと自覚している作家は、芥川龍之介と星新一、小松左京、そして筒井康隆です。諸先生の作品はすべて読んでいると思います。私が書くユーモア小説は筒井康隆のドタバタ小説と呼ばれている作品に。長編小説は、宇宙的なスケールと深淵な謎に挑んでいた小松左京の作品に。オチの鋭いショートショートの作品は、星新一から強く影響を受けています。

芥川龍之介の作品は、現在は純文学のジャンルにあるようですが、私にとってはエンターティメントです。私の小説魂の根底にあるのが芥川龍之介の小説なのです。「河童 (集英社文庫) 」はSFだと思いながら読みました。「蜘蛛の糸・杜子春 (新潮文庫) 」はいまだに心をとらえて放さない童話です。釈尊が降ろした蜘蛛の糸。誰でも地獄に救いの糸が降りて来たら死にものぐるいで糸を登り、ほかの死者たちが登ってきたら焦るのは当然のこと。平常心でみんなも登らせるような男であれば、地獄に落ちるようなことはなかったでしょう。釈尊の慈悲はかえって冷酷な仕打ちのようだと思ったものです。そして晩年の作品の「歯車 (岩波文庫) 」にも芥川龍之介の奥深い心が描かれていて心を揺さぶられました。ほかの作品でも当時では珍しい時代を先取りしたような構成の作品があったりで、今もいちばん好きな作家は誰かと訊かれたら、迷わず芥川龍之介と答えます。それ以外の作家で影響を受けたと思う作家は宮本輝です。今でも小説のジャンルにとらわれることなく、読み、また書いていますが、純文学とされている宮本輝の小説は、なぜか心惹かれ、読み続けている作家です。どこにでもあるような設定のお話なのですが、読みはじめると、目を離せなくなる作品が多いのです。

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ライタープロフィール

MUMUさん/男性/年齢:50代/新潟県在住/神社が好きで日本各地をまわっています。趣味でボーカロイドでの音楽作りやギターでオリジナルの歌をつくり、ときどきライブもしています。自分らしく生きることをモットーにしています。