図書館司書の仕事体験記
40歳過ぎて資格を取得し図書館司書で仕事をした体験記を紹介します。

実際に働いてみて良かったこと

2011/11/04

図書館の仕事の全てが、本に関わることでした。図書や雑誌の選定では、書評を読むことが主な仕事でした。サーバーへのデータ入力も、すべて本に関する情報の入力でした。リクエスト業務やレファレンス業務も、本の所在を探したり書物を調べたりすることで、私には面白くて仕方のない仕事でした。

ただ注意しなければならなかったのは、それらの業務にあまり熱中しすぎないことでした。仕事である以上、趣味とは大きな違いがあったからです。いくら面白いといっても、一つの仕事にばかり時間をかけることはではきませんでした。

図書館司書にはオールマイティが求められていました。利用者からのどんな要望にも対応できる、スペシャリストでなければなりませんでした。

その点、浅く広い趣味の持ち主であった私は図書館司書に向いていました。利用者からの要望を無難にこなして、毎日仕事を続けていました。ただ実際に図書館司書として働いてみると、私が本当に良かったと思ったのは、それらの業務とは別のところにありました。

それは人との関わりの中にありました。私が嬉しいと思ったとき、いつもそこには人がいました。利用者から、この図書館には良い本ばかり置いてあるとか、僕の好きな本がとても多いといわれると、私は嬉しさのあまり舞い上がってしまいました。

それは私の図書選定に対しての何よりの評価でした。しかし仮にそれを上司や同僚からいわれたとしても、私はそれほど嬉しくなかったと思いました。利用者という現場からの声が、私にとって最高の誉め言葉でした。

カウンター業務が苦手だった私も、少しづつ慣れてきました。貸出に返却、リクエストや参考業務にも対応できるようになりました。そんな私がカウンターにいると、ひとりの女性が本をカウンターに置きました。

私が返却処理をしていると、その女性は今置いたばかりの本の中から1冊を取り上げました。「これ面白かったで」といって、ページをめくりました。私に目次を見せて、ひとしきりその小説の話を続けました。

そのとき私の心に、嬉しさがこみ上げてきました。1冊の本が面白かったと喜んでもらえたことが、図書館司書としての私にとって、ほかのどんなお礼の言葉よりも嬉しかったことを覚えています。

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ライタープロフィール

キイチロウ/男性/50代/福井県在住/ごく普通の仕事をしていて、ごく普通の考え方をする、ごく普通の趣味を持った、ごく普通の外見の人間です。ただ他の人よりも少しだけ、人間ウォッチングに優れていると自分では思っています。