図書館司書の仕事体験記
40歳過ぎて資格を取得し図書館司書で仕事をした体験記を紹介します。

初日はどうだったのか

2011/10/30

図書館司書としての初日は、まず書棚に並べてある図書や雑誌の場所を覚えることから始まりました。図書館司書資格取得の際に、勿論、基本的な分類方法は学んでいました。けれど細部にはその図書館独自の分類方法があったり、決まり事があったりしました。

例えば雑誌は、まずスポーツや芸術というジャンルで分類されていました。それからその中で、次にタイトルの「あいうえお順」に分類されていました。

次に図書館内の各部屋を見て回りました。書庫が想像していたよりも広く、保管冊数が15万冊もあることに驚きました。参考室や特別資料室も見て、慌ただしい午前はあっという間に終わり、お昼休みになりました。

しかし図書館の利用者は、12時を過ぎたとたん、昼休憩を利用する人たちで急増しました。カウンターの前には長い列ができ、昼当番の司書が必死の形相でパソコンに向かっていました。

1人ではとても対応し切れない利用者の数に、昼食を終えた司書たちが次々にカウンターに出ていきました。結局全員で対応をして、何とかラッシュタイムを乗り切ることができました。私はベテラン司書にいわれるまま書架に走り、数冊の図書や雑誌を探しました。

図書館でオフタイムといわれるのは、平日なら午後1時から3時まででした。その時間帯は一旦利用者が減り、3時になると再び保育園帰りのお母さん方で賑わいます。

という訳で、その一番利用者の少ない時間帯に、私はカウンターに座ることになりました。有無を言わさぬ速攻で、事務室のパソコンで10分ほどバーコードリーダーの使い方を練習しただけでの実践でした。

一言の言い訳も言えないまま、私はカウンター仁すわりました。勿論、私一人だけではなく、ベテラン司書も隣に座っていました。しかし貸出と返却の業務は、全て私がやるようにとの指示を受けていました。

カウンターから図書館内を見回すと、自分が利用者全員に見られているような気がしました。年老いた男性が、雑誌を持ってカウンターにやってきました。私はバーコードリーダーのスイッチを押しながら、雑誌のバーコードをなぞりました。しかし何の反応もなく慌てていると、訝しげな顔で老人が、「返却やない、貸し出しや」といいました。

私はすぐにパソコンを貸出画面に変更し、何とか雑誌を老人に渡すことができました。「貸出なのか返却なのか、それを先に訊いてください」ベテラン司書の声が飛んできました。

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ライタープロフィール

キイチロウ/男性/50代/福井県在住/ごく普通の仕事をしていて、ごく普通の考え方をする、ごく普通の趣味を持った、ごく普通の外見の人間です。ただ他の人よりも少しだけ、人間ウォッチングに優れていると自分では思っています。