歌手の舞台裏
「歌手の出演はどうやって頼む?」「歌手のお出迎えは?」「歌手のリハーサルとは?」「歌手のわがままに四苦八苦?」など歌手の舞台裏を紹介します。

歌手の本番とは?

2014/03/06

歌手の本番は、個人としての性格から歌手としての性格に変化する側面を見せてくれます。客席からは見えない舞台袖には関係者や後援者がおり、緊張感の漂う特殊な場所といえます。

今は亡きお嬢「美空ひばり」さんは、優しい表情で関係者と余裕の雑談をしており、出番になると燐とした風貌に変り、スポットライトを浴びた瞬間から体が大きく見えました。ステージの本番中、私は先生の後姿をみていますが、後姿が素晴らしい。藤間流の師匠と懇意にしていた時「舞は背中で表現するのが一番難しい」といわれた事があり先生の後姿が今でも鮮明に焼きついています。

思い出酒の大ヒットで再起した小林幸子さんは、舞台袖で人という字を書き飲み込みました。人を飲むという芸能界のおまじないで、何度も繰り返していました。出番が近づくと「エイ、エイ」と小さな掛け声が聞こえ、ステージのライトを浴びた瞬間にスッと背筋が伸びて別人に生まれ変わります。

俳優はプライベートと大差ない方が多く、歌手はプライベートとの差を大きく感じます。これは、作詞家の歌詞を自分の物にして、主人公に成りきる為の宿命かもしれません。

舞台袖では撫で肩の優しい女性なのに、本番になると腰が据わり肩が張った男性に見えます。逆に本番では理想の女性のように妖艶な歌を歌い、袖にもどるとひょうきんな歌手もいます。

歌手の本番で大変なのは、新曲を披露するステージです。発売前の曲や発売直後の曲は歌い込みが足りなく、歌詞がうろ覚えの時もあるのです。そういう場合は付き人が楽屋で歌詞を紙に書き、最前列で歌手に見せます。まあ、早い話がカンニングですが結構多いのです。

或る日、大物歌手がステージで歌っていると歌詞を間違え、シドロモドロになりました。歌手は客席に頭を下げ「申し訳ございません、もう一度歌い直します」といい、「おい弟子!歌詞のカンニングペーパーが逆さまになってるぞ!読めるかバカ!」といいます。観客は大笑いで拍手喝采、いくら大物歌手でも逆さまの歌詞は読み難いですよねえ。

え!大物の歌手名ですか?歌う時に鼻の穴を広げる大御所です。

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ライタープロフィール

Jack天野/男性/年齢:50代/セブ島在住/13歳より横須賀の将校クラブでドラマーデビュー、20歳でハモンドオルガン奏者、その後ピアノの弾き語りとしてファイアットリージェンシーと契約し東南アジア各国のホテルロービーピアニストを務めました。ちょっとマイナーな部分も含めて、楽しい記事を書きたいと思います。宜しくお願いします。