歌手の舞台裏
「歌手の出演はどうやって頼む?」「歌手のお出迎えは?」「歌手のリハーサルとは?」「歌手のわがままに四苦八苦?」など歌手の舞台裏を紹介します。

歌手のリハーサルとは?

2014/03/04

歌手のリハーサルは、一般の方が見れない部分で真剣な遣り取りが行なわれています。ベテラン歌手は手馴れたもので、バンドや音響の緊張感を和らげリラックスさせてくれます。売り出し中の若手やヒットを飛ばしている中堅は、逆に威圧的な態度を取る事もあります。

ステージ上ではバンドのセッティングがはじまり、音響と照明のテストが行なわれます。音響のチェックは特に念入りに行なわれ、付き人やマネージャーが担当します。エコーの響き方、リバーブの残量、イコライザーの掛け方に至るまで的確に指示します。

一番肝心な事は音の返しです。音の返しとはモニタースピーカーの事で、歌手の斜め前に立っている小さなスピーカーです。自分の声が良く聞こえないと音程が取れませんし、抑揚も付け難くなり、バンドとのバランスも上手く取る事ができません。

バンドのセッティングが終わると、ベタという演奏を行ないます。ベタとは、楽譜のリピート記号や繰り返し記号を一切無視して演奏する方法で、楽譜の間違いだけをテストします。付き人が歌手の替わりに歌い、音響の調整を更に煮詰めていきます。ひと通りチェックが終了すると、ここで歌手がステージに上がってきますが、歌手はその間、開場の一番奥、二階席、中央、最前列で響きをチェックしているのです。

私はイベントの主催者でもあり12人の兵隊を抱えるバンドマスターです。歌手がステージに上がり「よろしくお願いいたします」と頭を下げ緊張感が高まります。司会者が必要なところだけ話し、曲を紹介すると演奏をはじめます。ベタではなくフルコーラス演奏し、歌手も本番通り真剣に歌います。歌手が手の平を下に押し下げる仕草をすれば演奏を抑え、逆に手の平を上にして押し上げれば演奏を盛り上げていきます。テンポは気に入らない場合は、股を叩いてテンポを調整するよう指示してきます。

バックバンドのコツは、歌手の後姿を見ながら同じポイントで息継ぎをする事です。「息が合う」という言葉の意味に由来しますが、阿吽の呼吸として必要です。しかし、本番では熱気と興奮でリハーサル通りに行かない場合が多く、バンマスには豊富な経験と臨機応変が必要です。歌手はリハーサルと本番の二回も歌っているのですね。

あ!そうそう、名前は書きませんがカラオケの伴奏で口パクの歌手もいました。もちろん、リハーサルなんかしません。口パクがお客さんにバレたら、どうするんでしょうねえ? 直ぐに人気がなくなりました。

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ライタープロフィール

Jack天野/男性/年齢:50代/セブ島在住/13歳より横須賀の将校クラブでドラマーデビュー、20歳でハモンドオルガン奏者、その後ピアノの弾き語りとしてファイアットリージェンシーと契約し東南アジア各国のホテルロービーピアニストを務めました。ちょっとマイナーな部分も含めて、楽しい記事を書きたいと思います。宜しくお願いします。