歌手のキャンペーン舞台裏
「歌手のキャンペーンは日本だけ?」「歌手のキャンペーンはノーギャラ?」「歌手のキャンペーンは呼んだら来てくれる?」「メリットは?」「デメリットは?」など歌手のキャンペーン舞台裏を紹介します。

あるP盤歌手のキャンペーン

2014/01/21

キャンペーンには2種類あり、大手レコード会社の契約歌手とP盤歌手がいます。P盤歌手とは自費でCDを製作することから、プライベートの頭文字Pを取っています。

大手レコード会社にはP盤専門の担当者がおり、地方で活躍する歌手のサポートも行います。殆どの場合は、CD1000枚のオールインパッケージで50万円ほどですが、作詞、作曲、編曲によるマスター音源とジャケ用のポジ写真が必要になります。

P盤歌手のキャンペーンは、地元を中心にしたエリアでの手売りになりますが、知り合いや親族を中心に行なうので余り苦労はありません。キャンペーンのノルマもなく、1000枚を2〜3年かけて販売します。

しかし、P盤で知り合いや親族を対象にしてもヒットに結びつくはずがありません。レコード会社と契約できなくても、自力で全国キャンペーンをしているP盤歌手がいます。事務所のそばに派手なワゴンが停車しているので、そっと近づいてみると、ポスターがベタベタ貼ってあり、マジックでなにやらメッセージが書かれています。まるで落書きのようになっており「汚いキャンペーンカー」だなあ・・と思いました。

事務所に入るとジャージを着た男性が待っていました。名前は忘れてしまいましたが、町会議員に最年少で当選した経歴を持つP盤歌手です。ワゴンに自主制作したCD1万枚・衣装2着・寝袋・着替え・自炊セット・カラオケセット・米味噌塩醤油などを詰め込み、九州を出発して日本1周キャンペーンの帰りでした。車を使用するので一般の歌手がいけない山里地域を中心にキャンペーンしたそうですが、そういう地域は人口が少なく、1日で1枚も売れない日が続いたそうです。

そこで思い立ったのが漁港を中心にキャンペーンすることです。漁港の周辺には漁師の溜まり場もあるはずですし、気は荒いけど人情はあると踏んだそうです。しかし、漁師は夜中に出漁して明け方に市場へ水揚げします。仮眠した後、昼前に出漁して日暮れ前に水揚げします。

歌手は漁業組合と交渉して、セリの終わった後30分だけ時間を貰ったそうです。トロ箱の上に乗って漁師に関連した演歌を歌い、拍手喝さいですがCDは売れませんでした。替わりに売れ残りの魚を貰ったそうです。

歌手はキャンペーンの基本に戻り、政令都市の繁華街を中心にキャンペーンしました。1万枚を手売りするのに2年以上掛かったと言うので、「じゃあ完売ですか?」と聞いたら、「いやあ あと650枚で完売です、地元宮崎へ帰る前に完売します」と意気込んでいました。

その後、市会議員に当選したと言う手紙を頂きましたが、歌手はキッパリ諦めたそうです。

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ライタープロフィール

Jack天野/男性/年齢:50代/セブ島在住/13歳より横須賀の将校クラブでドラマーデビュー、20歳でハモンドオルガン奏者、その後ピアノの弾き語りとしてファイアットリージェンシーと契約し東南アジア各国のホテルロービーピアニストを務めました。ちょっとマイナーな部分も含めて、楽しい記事を書きたいと思います。宜しくお願いします。