歌手のキャンペーン舞台裏
「歌手のキャンペーンは日本だけ?」「歌手のキャンペーンはノーギャラ?」「歌手のキャンペーンは呼んだら来てくれる?」「メリットは?」「デメリットは?」など歌手のキャンペーン舞台裏を紹介します。

キャンペーンで引退を打ち明けた歌手

2014/01/19

キャンペーンは必ずヒットさせてメジャーになるとか、ヒットを積み重ねる目的があります。しかし、初めからダメだったら・・引退と考えている歌手も多いのです。

私の事務所にやってきた歌手で「今回ヒットしなかったら引退します」という歌手がいました。私は「ダメならとか、引退を口にする歌手のキャンペーンはサポートしません」と断ります。風貌に覇気がなく、歌手としての魅力もありませんでした。

この男性歌手は、作詞家三浦康照の弟子で冠二郎といいます。歌手には華があり人を惹き付けるオーラを放っているのに、私はまったく感じませんでした。命ひとつでデビューし旅の終わりがヒットしたけど地味な存在感がマイナスでした。興行の仕事も少なくなり、時には事務所に内緒でアルバイトをした事もあると語っていました。

10年以上の不遇時代を重ね私の事務所に来た時は、心身ともに疲れているように見えたので、「歌手が引退する時は花道を歩いて引退するのではないですか?」「貴方はビックヒットもなく、今では殆ど人気もないので引退ではなく廃業ですね」と言ったらムッとした顔つきになり、唇を真一文字に結んで私を睨みつけました。私は、うん!まだ脈がある、後は歌手が初心に帰る事だけだと感じました。

新曲を試聴させてもらうと、掛け声が入っていたり英語が混ざっていたりして、「歌は演歌調ですけど今までに無い楽曲ですねえ、聴いてると元気がでてきますよ!」と言うと驚いたような顔をして「え!本当ですか?違和感ないでしょうか?」と聞いてくるので、「私もアレンジをしますが、ポップス調で演歌をアレンジしたら面白いと思っていました」とたんに彼の目つきが変りキラリと輝きを増してきたのです。

歌う時のアクションが段々派手になり、体中からエネルギーの溢れる歌い方に変化しました。その後同じような路線の作品を次々とヒットさせ、引退の話は笑い話になっています。

歌手は苦節何十年と簡単にいいますが、紅白に初出場できる歌手は限られているのですね。先輩作曲家のアドバイスで「麦は踏まれて実を付ける」と言われた事があります。冠二郎さんの素直なキャラクターが私は今でも好きです。

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ライタープロフィール

Jack天野/男性/年齢:50代/セブ島在住/13歳より横須賀の将校クラブでドラマーデビュー、20歳でハモンドオルガン奏者、その後ピアノの弾き語りとしてファイアットリージェンシーと契約し東南アジア各国のホテルロービーピアニストを務めました。ちょっとマイナーな部分も含めて、楽しい記事を書きたいと思います。宜しくお願いします。