営業職の体験記
「営業職のオモシロさ」「受注を取り逃がした苦い体験」「仕事を円滑に進める社内営業」など、14年間の営業職体験から得た事を紹介します。

受注を取り逃がした苦い体験

2012/08/29

小中学校などの水泳プールの場合、仕事の発注は往々にして現場の所長さんに、その権限が委ねられている場合が非常に多いのです。そのため、仕事を取るための営業の最終段階では、現場の所長さんに、いかに気に入ってもらうかが勝負どころとなるのです。一つ仕事が取れれば、それこそ大きなお金が入ってくるわけですから、営業の責任は大きく、それだけにこちらも必死となるわけです。私がステンレスプールのメーカーの会社に入社して、半年ほどたった時のことでした。

もちろん、まだまだ実績などというものもなく、営業経験も少なく、ようやく1人でなんとか仕事をこなせる程度の私にしてみれば、受注のための仕事といっても、当然のように人のツテなどという便利なものもありませんでした。何もないところから仕事を取るには、たったの一つのことを繰り返すしかありません。それは、ともかく何度も何度も現場へと足を運び、現場の所長さんと顔を合わせること、それしかなかったのです。よく営業というと、楽しい話とか面白い話とか、そんな巧みな会話によって客先から歓心を得て仕事を取ってくるように言われる場合があります。 ところが、私はというと、たぶん今でもおなじでしょうが、そんな気の利いた話の出来る人間ではなかったのです。ともかく不器用な私でしたから、現場の所長さんから気に入ってもらえる筈はなく、場合によっては、まるで犬ころでも追い払うような扱いを受けたことも幾度もありました。しかし、それでも、営業という仕事を担当した以上は、またその現場へと、何度も何度も訪問するのです。そんなある日、その現場の所長さんから、私宛に電話が入りました。それによると、現場に来てほしいとのこと。仕事が受注できるのかなとの期待を持ちながら現場へと足を運ぶと、プールについて他に1社が競合していたことが分かり、所長の話しではくじ引きでどちらかに決めようとのことでした。

×と○の書いた紙が封筒に入れられ、私の前と競合メーカーさんの前にも置かれました。そして、年若い私から先にその封筒を取ることになり、その時、所長から気に入られている筈がないと思った私は、わざわざ自分の前に置かれた封筒ではなく、競合メーカーさんの前に置かれた封筒を取ってしまったのです。結果は私の負けでした。その時はじめて、所長さんはわざわざ私の前に○と書いた封筒を置いてくれていたのだと気づいたのです。さて、私がこの報告を上司にしたところ、上司から大目玉をくらったことは言うまでもありません。

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ライタープロフィール

ガクドウさん/男性/年齢:50代/横浜市在住、サラリーマン時代から、文章を書く仕事に携わっていた関係から、現在はライターを職とするようになりました。人からちょっと変っていると言われますが、その分、ちょっと違った角度から物を書くことが出来ると思っております。よろしくお願いします。/ブログ