地方紙の連載体験記
「地方紙の連載で大変だったこと」「失敗談」「どのようなペースで書いたのか?」など地方紙の連載体験記を紹介します。

地方紙の連載で気をつけること

2012/02/07

新聞といっても、私がコラムを書いていた地方紙の範囲は狭いものでした。県内を二分するその人口は20万人に満たない数で、いつどこで誰と会っても不思議ではありませんでした。だから特定の人物のことを書くことは出来るだけ避けるか、または書くのなら喜ばれる内容にする必要がありました。地域で頑張る人たちの姿を書くことが第一で、何かを批判することなどもってのほかでした。

私が一番多く書いたのは自分の家族のことでした。しかし中にはどうしても書きたくて我慢できないこともあり、それを新聞社に送ったことがありました。それは批判でも中傷でもなく、感動した出来事を取り上げたコラムでした。だから私としては、誰かから何かを言われるなどとは思ってもみませんでした。

それなのにそのコラムを書いた後、私の家に一通の手紙が舞い込みました。それは私がコラムに書いた団体と同じように合唱をしている方からで、その人は違う団体に所属していました。手紙には私に対する不満が書いてありました。私が特定の団体を応援するようなコラムを書いたという批判で、次回のコラムには自分たち合唱団のことを取り上げてほしいという内容でした。

この手紙を読んだとき、私は馬鹿馬鹿しくてなりませんでした。私はただ自分が感動した事柄をコラムに書いただけで、特定の団体を応援しようという気持ちなどほんの少しもありませんでした。それなのにそのことを新聞社に伝えると、意外な答えが返ってきました。出来るだけ波風を立てないように、今度は手紙を書いてきた合唱団のコラムを書いてほしいというのでした。私は呆然として、何も答えることが出来ませんでした。

自分の名前を出した文章である以上、それは自分の意志で書いたものでなければならないと思いました。詳しく話を聞いてみると、その2つの合唱団は以前から仲が悪くて、何かがあるたびに揉めているのだということでした。

地方紙という狭い枠組みの中では、様々なことに気を配りながらコラムを書かなければならないことを私は初めて知りました。

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ライタープロフィール

キイチロウ/男性/50代/福井県在住/ごく普通の仕事をしていて、ごく普通の考え方をする、ごく普通の趣味を持った、ごく普通の外見の人間です。ただ他の人よりも少しだけ、人間ウォッチングに優れていると自分では思っています。