地方紙の連載体験記
「地方紙の連載で大変だったこと」「失敗談」「どのようなペースで書いたのか?」など地方紙の連載体験記を紹介します。

はじめて地方紙にコラムが掲載された時はどうだったのか?

2012/01/12

初めてのコラムは充分に時間をかけて書き上げました。推敲も何十回と行ない完璧を期したはずでした。しかしもう一度読み直してみると納得がいかず、また書き直しをするという繰り返しでした。締切ギリギリに送付し、そしてついにそのときがきました。眠れない早朝の4時、布団の中でコトリという音を聞きました。

玄関へ走り戸を開けて郵便ポストから新聞を取り出しました。リビングへ戻るとページを開き、コラム欄を一気に読みました。悪くないと思いましたが、これでよかったのかどうかさっぱり分かりませんでした。

コラム欄には著者名とともに顔写真が掲載されていました。私を知っている人がこの欄を見れば、すぐに書いているのが私だと分かるはずでした。少し気恥ずかしい思いもありましたが、私はいつもどおり家を出ました。

すると待っていたようにお向かいの家の小母さんが声を掛けてきました。コラムを読んだことを私に伝えるために、私が家から出てくるまで待っていてくれたのでした。職場ではこれまであまり話をしたことのなかった人からも声を掛けられ、上司からも誉められました。新聞に何かを書くということは、どうやらそれだけで社会的評価に値するようでした。

その夜の夕食時、私は家族から本音の評価を訊いてみました。親しい友人からも感想を聞いてみて、良かったという意見とイマイチだという意見があることを知りました。しかしそれは好みの問題で、全ての人から良かったといわれるコラムなど書けないと諦めて自分なりに精一杯書くことに決めました。町中を歩くと、知らない人から声を掛けられるようになりました。コラムを読んだことを私に伝えようとしてくれているのに、私は素直に「ありがとうございます」といえずに反省することがありました。

自分の書いた文章が紙面に掲載されることを、私はただ単純に嬉しさだけで捉えていました。多くの人の目に触れることの意味を、そのとき初めて考えたのでした。

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ライタープロフィール

キイチロウ/男性/50代/福井県在住/ごく普通の仕事をしていて、ごく普通の考え方をする、ごく普通の趣味を持った、ごく普通の外見の人間です。ただ他の人よりも少しだけ、人間ウォッチングに優れていると自分では思っています。