- 小説の出版体験記
- 「どのようにして出版に至ったのか」「小説を書いていて大変だったこと」「小説の書き方」など小説の出版体験記を紹介します。
小説を書いていて楽しかったこと
2011/12/25
小説を書いていると、希に筆が止まらなくなることがあります。まるで自分ではない誰かに書かされているようで、勝手に指が文字を紡いでいくのです。
あれよあれよという間に作品を書き進み、気がついたら完成していたという具合です。そんなとき作者はとても楽しく幸せな気分です。そして完成した作品も良い仕上がりです。それはその物語りが作者の中で熟成していたからで、書き始める時期がぴたりと的中したからです。
しかしそれはただ楽しかっただけで、自分のためにどうだったかと考えてみると疑問が残ります。何度も立ち止り思考し、調査を繰り返しながら書き上げたときのほうが、技術的にも精神的にも自分自身を向上させてくれます。
よく書き手が楽しくなくては読み手は楽しくない、という言葉を聞くことがあります。あれは楽しい小説を書くときには充分楽しみながら書かなくては読み手側にその楽しさが伝わらないということであり、全ての小説のことをいっているのではありません。
本当の小説の楽しさというのは、その小説の中に全ての思いを書き切れたときに湧き上がってくるものだと思います。何も書きたいことがないときには、決して書こうなどとは思いません。自分の中に熱い気持ちが溢れ、それが熟成したときに初めて、書きたいという衝動に駆られます。
登場人物の設定や構成など細かなことを考え、必要な情報を収集します。しかし下準備通りに書き進めることなどあまりなく、大抵の場合、横道に逸れたり途中で書けなくなったりします。
書けないときには何をどうしても駄目で、一時小説から離れてしまったほうが良い場合があります。それでもほかの何かをしながらでも常にその小説のことを念頭に置いていれば突然妙案が浮かぶことがありますし、またその小説から完全に離れたほうが良い場合もあったりします。
そんなふうに苦労して小説を書きあげたときに初めて、心の中に本当の楽しさがふつふつと沸き上がってきます。
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キイチロウ/男性/50代/福井県在住/ごく普通の仕事をしていて、ごく普通の考え方をする、ごく普通の趣味を持った、ごく普通の外見の人間です。ただ他の人よりも少しだけ、人間ウォッチングに優れていると自分では思っています。