ホステス体験記
ホステスの心遣い、会話術、困った人のかわしかたなどホステスの体験記を紹介。

困った人のかわしかた

2011/08/17

イヤな要求をサラリと流す方法

酒癖の悪い人、口説く人、暴力的な人。人の数だけいろいろなタイプのお客様がいます。そんな面倒なタイプは、もちろんホステスに嫌われます。ですが、いちいちイヤな顔をしていては商売になりません。それでも、どうしても自分には向いていないことを要求された時私は「逃げ道の言葉」を用意しています。

一番要求されがちなのが、何か歌ってくれというカラオケのリクエストです。
私はもともとカラオケのないお店で働いていたので、カラオケは仕事ではなく遊びと捉えていて、よほど気乗りしないと歌いません。そこで、要求された時に「歌はね〜、1時以降じゃないと歌えない体質なの。その代わりに、今は喋って飲んでますので、どうぞ気になさらず」と言います。だいたいのお客様は「え〜?何それ」と言います。そこから逆に「お客様はどんな歌がお好み?」と聞き、本人に歌わせるという流れにします。もちろん中には「話をそらすな」と怒る人もいます。そんな人には素知らぬフリをします。だって、歌を聴きにきたわけじゃないでしょ。イヤならお帰りください。と、心で思うだけです。

また、私が要求されて一番イヤなことは、自分の写メを撮って送ってくれという要望。だいたいが遠方に住んでおられる方です。私は本当ににこの要望が苦手で仕方がありません。困ったな〜、でも撮りたくないしな〜と、考えた時に、ふと思い出したフレーズがあります。

それが私の好きな椎名林檎さんの歌の歌詞。「あなたは写真をとりたがる、私はそれをいやがるの、だって写真になっちゃえば私が古くなるじゃない」昔から何度となく聴いてきた甲斐があったものだ。と、ひっそりほくそ笑み、早速引用。

「私、ほんとに写真が苦手で・・・。それに、だって写真になっちゃえば〜」と続け、著作権を考え、最後に林檎ちゃんの歌詞から抜粋ですと付け加えます。だいたいが「そうかい。仕方がないね」と諦めてくれるようになります。なので、その度ごとにこの方法でかわすのです。

また、おそらく世のホステスさんが一番困るのは、真剣交際を申し込まれた時ではないでしょうか。ふざけてもいけないし、真面目に断ったらお店に来なくなる。さてどうするか。

私は以前シングルマザーということをお店の方針で隠していました。離婚の原因はお金と女性関係。ですので、交際を申し込まれた時にこう言うのです。結婚していたことはもちろん伏せ、彼との別れの原因をそのまま告げ、未だその傷が癒えずにいる、だから今は誰とも付き合えないと。もちろん傷などとうに塞がっています。なんなら、別れたことは正解!とすら思っているほど。たしかに当時はとても傷つき、何もかも終わったような感覚でした。その気持ちを思い出し、切々と語ると「ごめん。辛いことを思い出させてしまったね。長い目で見るよ」と、そこから先は何も言われず、しかも可哀相と思うのか足繁く通ってくれます。

ひどいと思うでしょうが、これがホステスの役割なのです。いかに傷つけず、期待を持たせすぎず、適度な距離感を保つか。これが理想的。わかっていても、なかなかうまくいかないこともありますが、その繰り返しによって私たちは成長していけるのだと思います。

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ライタープロフィール

アールさん/女性/年齢:30代/北海道函館市在住/中学生の男の子2人をもつシングルマザーです。ホステスとして働いていますが、空いた時間は趣味のオークションで出品作業。好きなことは読書と音楽・映画鑑賞。ただ、今はちょっとその時間が取れないのが残念。食べて飲んで寝ることが今の楽しみで、それがストレス解消にも。それでも疲れが著しい時は、椎名林檎さんのCDやDVDで英気を養います。