インドってどんな所?
インドに長期滞在したそまちひろさんが、現地の様子を紹介します。

女手ひとつで頑張る、バラナシの韓国人女性

2015/08/07

バラナシ

バラナシ

そのレストランを見つけたのは、まったくの偶然でした。バラナシをふらふらと歩いているとき、ある細い路地の先にゲストハウスを発見。入ってみると清潔かつ静かで良さそうだったので、それまで泊まっていたゲストハウスから引っ越しました。

宿のオーナーが、「最上階にコリアンレストランがあるから、良かったら行ってみて」と言うので行ってみると、そこは韓国人女性がオーナーのレストランでした。チヂミやキムチチャーハンなどの美味しい韓国料理が食べられ、しかもバラナシでは貴重なビールが飲めるお店とあって、友達と毎日のように通いました。

オーナーはボナさんと言って、30代前半くらいの若い女性でした。ボナさんは20代のころインド全土をバックパック旅行して回ったそうで、バラナシに魅せられてしまい、レストランを出すことにしたのだそう。インドが本当に大好きで、話しても話してもいろんなエピソードが出てくるボナさん。どこかわたし自身に重なるところもあり、すっかり仲良くなりました。

男社会のインドで、しかもバラナシという特殊な土地で、外国人の若い女性がビジネスをするのは想像を絶するほど大変だと思います。でも明るくてエネルギッシュなボナさんは、「わたしはこの町に恋をしているから、全然大変だと思わないの」と笑っていました。

1度だけ、彼女がものすごく落ち込んでいたことがありました。話を聞くと、雇っていたインド人の若い調理スタッフが、店のお金を持ち逃げしたと言うのです。そればかりではなく、親戚の家に逃げ込んだ彼が、「店ではオーナーに殴られていた、給料もまともに払ってもらえなかった」とありもしないことを話したため、怒った親戚がバラナシの商工組合に訴え、バラナシでのボナさんの立場が悪くなっている、とのことでした。

ボナさんはその後、体調を崩して寝込んでしまい、しばらくお店で姿を見かけませんでした。数日後にまた話をしたときは、すっかりやつれて見えましたが、商工組合と話し合いをしたところ、ボナさんに非がないことを分かってくれたそうです。

そんなトラブルにもめげず、現在はバラナシで最も人気のあるレストランのひとつになっているようです。いつかまたインドに行くことがあれば、ボナさんに会うためだけにバラナシに行くのもいいな、と思っています。

Bona cafeトリップアドバイザー:
http://www.tripadvisor.jp/Restaurant_Review-g297685-d1978683-Reviews-Bona_Cafe-Varanasi_Uttar_Pradesh.html

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ライタープロフィール

そま ちひろさん/女性/年齢:30代/中南米(2013年現在)/フリーライターおよび翻訳業。お気に入りの国はインド、住んでみたい国はスペイン、そして現在は南米を縦横断中、という矛盾だらけの人生を満喫しています。著作に「ヘラクレイトスの水」(大宰治賞2009収録)。