インドってどんな所?
インドに長期滞在したそまちひろさんが、現地の様子を紹介します。

インド・コーチンのユダヤ人街

2015/03/20

南インドのケララ州 ヨーロッパの香りが漂っています

南インドのケララ州 ヨーロッパの香りが漂っています

南インドのケララ州は、インド全域で最も識字率が高く、また治安もいい州と言われています。また、キリスト教徒が多い州でもあります。1503年、この地にポルトガル人がやってきて、ポルトガルの植民地となりました。かのヴァスコ・ダ・ガマの最後の地としても有名です。香辛料の貿易で栄え、ポルトガルに次いでオランダ、イギリスなど、当時の強国の支配を受けてきたコチには、まぎれもないヨーロッパの香りが漂っています。

ケララ州の州都はコーチン。行政と経済の中心はエルナクラムという街なのですが、旅行者が向かうのはコチという植民地時代の名残が色濃く残る地域。コチの街並みは、南欧風の中にオランダ風の建物が残っていたりして、かなり不思議なミックス具合を見せています。また、コチにはインドで唯一のユダヤ人街がありました。

このインドのユダヤ人の歴史というのが、とても古くて面白いものなのです。紀元70年にイスラエル王国が分裂したあと、南インドのマラバール海岸(カルナータカ州からケララ州にかけての海岸)に移り住んだユダヤ人がいました。この人たちは「黒いユダヤ人」と呼ばれていました。その後、15世紀にオランダやスペインなどから「白いユダヤ人」がコチやゴアに移住し、定住しました。

このコーチン・ユダヤ人と呼ばれる人たちは、1948年に現在のイスラエルが建国されると、ほぼ全員が里帰り(と言うのでしょうか?)したため、コチに残っているユダヤ人の子孫はごくわずかだということです。ほぼ2000年の長きに渡ってインドにユダヤ人が住んでいたなんて、なかなか想像もつかない話ですよね。

現在のユダヤ人街には、18世紀当時の家が公開されていたり、中を改装してお土産屋さんにしている建物が多く、実際に中に入ってみることもできます。インドのユダヤ人の歴史の前知識を持って、現在のコチのユダヤ人街をそぞろ歩くと、歴史のロマンをより身近に感じられて面白いのではないでしょうか。

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ライタープロフィール

そま ちひろさん/女性/年齢:30代/中南米(2013年現在)/フリーライターおよび翻訳業。お気に入りの国はインド、住んでみたい国はスペイン、そして現在は南米を縦横断中、という矛盾だらけの人生を満喫しています。著作に「ヘラクレイトスの水」(大宰治賞2009収録)。