インドってどんな所?
インドに長期滞在したそまちひろさんが、現地の様子を紹介します。

雨季の移動は命がけ

2015/06/19

ヒマラヤの聖地巡り

ヒマラヤの聖地巡り

2010年はインドの雨季がとりわけひどかった年で、あちこちで土砂崩れがおき、道が寸断されていました。そんな中わたしと友人は、山奥にあるヒマラヤの聖地巡りをすることに。何人かのインド人から「今は止めたほうがいいよ」と言われましたが、雨季も終わりかけの9月下旬でしたし、大丈夫だろうと強行。しかしインド人たちのアドバイスは正しかったのです。

リシケシから北にバスで10時間ほどの距離にある、バドリナースという聖地に向かっていたときのこと。途中までは順調に山道を進んでいたのですが、あるポイントで車がずらっと渋滞して、ぴくりとも動けなくなってしまいました。話を聞くと、少し先で土砂崩れがあり、土砂の撤去作業をしているとのこと。

まだ日も高かったので、まあ今日中にはバドリナースに着けるだろうと、余裕をかましていました。ところが2時間経っても3時間経っても、並んだ車が動き出す気配はありません。暇に任せて撤去作業現場を見に行ってみると、道の真ん中に山のように盛り上がっている土砂を、なんとつるはしと手押し車で悠長にとり除いています。しかも、作業員の中にはサリーを着た年配女性までいます。それを見た瞬間、ああ今日中に目的地に着くのは無理だな、と悟りました。

さて、夜になりようやく半分くらい土砂が取り除かれたところで、「まだ車は通れないが、人は通れる。4キロ先に町があるので、そこまで歩いて泊まればよろしい。ただ地盤が不安定なので、土砂のあたりは走って通過するように」というお達しが。実際に現場では、まだ小さい石や砂が絶え間なく落ちてきているような状態でした。土砂崩れの範囲はかなり広かったので、通っている間に大きな土砂崩れが起きて巻き込まれる可能性も……。

なぜこんなことに命を懸けねばならんのだ、と腑に落ちないまま、全速力で土砂崩れ区間50メートルほどを駆け抜けました。スリリングすぎます。それから4キロ先の町まで歩いてたどり着き、夕飯も食べられないまま就寝。ひもじかったのを覚えています。かなりハードコアだったな、と今でも思い出すほどの道中でした。

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ライタープロフィール

そま ちひろさん/女性/年齢:30代/中南米(2013年現在)/フリーライターおよび翻訳業。お気に入りの国はインド、住んでみたい国はスペイン、そして現在は南米を縦横断中、という矛盾だらけの人生を満喫しています。著作に「ヘラクレイトスの水」(大宰治賞2009収録)。