上下水道課の仕事体験記
キイチロウさんの上下水道課仕事体験記を紹介します。

実際に働いてみて良かったこと

2011/09/23

上水道課では、定期的に町全体の漏水調査を行ないました。布設した上水道配管が経年劣化して、常時漏水があるからでした。

町中の配管には各地域ごとに、その配管の中をどれだけの量の水が流れているかが分かる、流量メーターが設置してありました。水の利用が少ない夜間に仕切り弁を操作して、そのメーターを見ながら漏水個所の範囲を狭めていくという気の長い調査でした。

漏水調査の開始は、真夜中の0時でした。全員が作業服姿で仕切り弁を操作するハンドルを持ち、配管図を見ながら進めて行きました。

深夜といっても、水の使用が全く無い訳ではありませんでした。仕切り弁を操作する度に配管の中の水が濁るため、苦情担当の職員が電話の前で対応しながらの調査でした。

1時、2時、3時と進めても、どこで水が漏れているのかが全く分かりませんでした。最後には神頼み的になったりして、担当者全員が諦めかけたりもしました。

しかし根気よく何日か続けていくうちに、ようやく漏水個所が分かると、全員が歓声を上げました。全体の漏水量からみると、それはほんの少量でしたが、とても嬉しかった記憶があります。

地域に下水道が普及すると、それまで不衛生だった家前の側溝のことなど皆忘れてしまいます。けれど定期的に見学にやってくる子どもたちは、浄化センターの設備や仕事に興味津々でした。

幼い子どもたちは、絵本に出てくるうんちをとても喜びます。幼ければ幼いほど、うんちが自分に近い存在だからなのでしょう。あるとき保育園児たちが大勢やってきました。下水道のしくみを簡単に説明して、すぐに現場へ移動しました。

まず初めは浄化センターへ流入してくる、汚水を見て貰いました。そして「臭い臭い」と鼻をつまんでいた子どもたちを、今度は最終処理が済んだ、鯉が泳ぐ綺麗な水の池に連れて行きました。

初め子どもたちは、信じられないという状態で、誰もがぽかんとしていました。すると子どもたちの中の一人が、突然「魔法みたい」といいました。

あちこちから「魔法、魔法」と声が上がり始めました。子どもたちは純粋にそう思った様子で、いつまでもはしゃぎ続けていました。それを見たとき私は本心から、この仕事をしていて良かったと嬉しくなりました。

関連記事
ライタープロフィール

キイチロウ/男性/50代/福井県在住/ごく普通の仕事をしていて、ごく普通の考え方をする、ごく普通の趣味を持った、ごく普通の外見の人間です。ただ他の人よりも少しだけ、人間ウォッチングに優れていると自分では思っています。