トロピカル・タイム〜南太平洋航海記〜
ニュージーランドからヨットで南太平洋をクルージング。4年間の南太平洋航海記

世界一大きな体の国

2010/10/04

2004年 7〜8月
さて、トンガは日本でもよく知られている国名でしょう。トンガ王国は日本との繋がりが強く、企業やボランティアなども多く入っています。ヌクアロファの町には、日本への感謝の気持ちを表す記念碑があちこちに見られました。

トンガは南太平洋の中で唯一植民地になったことがない国なのだそうです。また、ほかの南の島国よりも生活が豊かな印象を受けました。

食事内容もそうですが、家電製品も多く販売されているようで、かなり近代化しているようです。その一方で、ゴミの問題に頭を抱えてもいるようです。壊れた家電の処理やビニール袋などのプラスチックゴミの処理の方法がまだ確立されておらず、島の公共バスに乗って一周すると島の一角がゴミだらけと化していました。さらに、フィリピンなどでも見られますが、そのゴミ捨て場で生活の糧を得ている人もいるようでした。偶然乗り合わせたバスの中で、地元の人が、昔はなかった貧富の差が近代化によってトンガにもできてきていると話してくれました。

ところで、トンガは巨人の国として有名なところでもあります。とにかく体が大きい!これはその食生活に大きな原因があるようです。つい最近、肥満についての番組をテレビで見たのですが、世界一大きな家族が住んでいるのはトンガなのだそうです。

これは肥満率や肥満人口というのではなく、単に家族全体の体重を足し算してという単純な計算の元の割り出されたもののようです。

それによると、トンガの人はとにかく脂肪と糖分の多い食事をしているということでした。たとえば、朝ご飯。食パン1斤(1枚ではありません!)の中身をほじって食べ、そこにアイスクリームを入れて食べるのです。飲み物は炭酸入りの清涼飲料水。これは、ヌクアロファの町でわたしが実際に目にしてので間違いありません。そして、お昼は揚げ物の魚とイモのフライ。おやつは揚げドーナッツ。夜はのぞく機会がありませんでしたが、きっと似たようなものでしょう。

また、トンガに肉類を輸出しているのはニュージーランドが主ですが、いわゆる脂肪分が多く、国内では販売できない部位を回しているのです。そんな脂肪の多いお肉をトンガの人は喜んで食べているというのです。

これは、実際にわたしがトンガで経験したことですが、スーパーマーケットの肉用冷凍庫に、チキンのぶつ切りらしきものが詰まった袋を見つけたのです。凍って白い霜が周りについているために、よく分からなかったのですが、チキンに間違いはないので購入したのです。

はたして、ヨットに帰って早速調理し始めたのですが、いくらゆでても油っぽさが抜けないのです。一体何これ!?と途方に暮れていると、夫が横からのぞいて、「それ、きっとチキンのお尻だよ」と。

なんと、わたしが購入したのはチキンの脂肪だらけのお尻の部分だけを集めた袋だったのです。どうがんばっても食べられる代物ではなく、もったいないけど捨てる羽目になりました。ところが、トンガの人はそれを日常的に口にしているというのです。これでは太るのも当たり前でしょう。ただ、ここ数年急速に糖尿病患者が増えており、国は食の見直しを国民に呼びかけてはいるようです。

ちなみのその肥満番組では、先進国に近い位置にある貧しい国ほど肥満傾向にあるということも述べられています。これは、いわゆる不健康な食物のほうが安いからだということのようです。つまり、生鮮食料品は高価で、食べてもおなかいっぱいになりにくい。けれど、脂肪や糖分、塩分の多いもの、ジャンクフードや菓子類は安く、空腹も満たしてくれるということなのです。

メキシコなどでは、某有名ハンバーガーチェーンのセットメニューのほうが、自宅で健康的な食事を作るより安く、ついそっちに走ってしまうという話でした。さらに、貧しさから、とりあえず空腹を満たすことのみに意識が集中し、誰も栄養や食べ方について教えてくれなかったという経緯もあるようです。

ニュージーランドの政治家の中には、健康な食品に対する税金を下げ、不健康な食品には税金を加算すればという提案をしている人がいるようですが、実現は難しいようです。

ところで、トンガはずっと王国として平和に来ていたように見えていたのですが、わたしたちが訪れた数年後の2006年に首都ヌクアロファで暴動が起こったのです。民主化を求める若者たちが暴動を起こして、町に火をつけたり、破壊するなどの騒ぎとなったそうです。一時はニュージーランドやオーストラリアの軍隊に出動要請するほどの大事態にもなったようです。

わたしが訪問した際には、美しい自然に囲まれ、笑顔の輝く明るく陽気な雰囲気しか見えませんでしたが(ほんの短い期間だったので当たり前ですが)、国民の中にはいろいろと不満があったのでしょう。3年以上経過した今でも、首都地域は厳戒態勢が引かれており、旅行者は注意するようにといわれています。残念ながら、中国人を狙った犯罪が多いということで、アジア人は特に警戒するようにということです。

ただ、トンガはほかにも島があります。首都ヌクアロファのあるトンガタプ島と異なり、とても静かでより美しいという評判の島々があるのです。そこで、わたしたちは、北へ数日の航海であがったところにあるババウという島に行ってみることにしました。

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ライタープロフィール

山下なおこさん/女性/年齢:30代/ニュージーランド滞在(16年以上)、自然と素朴な料理が好きな女性です。