トロピカル・タイム〜南太平洋航海記〜
ニュージーランドからヨットで南太平洋をクルージング。4年間の南太平洋航海記

毎日の収獲

2010/11/17

2004年 1〜3月
日本では、クリスマスが終わったとたん、いきなりお正月に町を模様替えしますよね。わたしはあの時期が一番大好きです。あまりの変わり身の早さに脱帽してしまいます。彼氏がいなくて「この世の終わり」みたいな顔をしていた友人も、忘年会や初詣の話に生き生きし始めるのもおもしろいものです。また、テレビ番組がスペシャルばかりになって、番組表がやたら長くなるのも「あぁ、年の瀬だなぁ」とわくわくする要素です。

海外に住んで、特に不便を感じることもなく、日本シックにかかることもありませんが、この年末年始だけは懐かしさがこみ上げてきます。どうもこの感覚は、日本人の多くにあるようです。それだけ大みそかやお正月は日本人にとっての一大イベントなのでしょう。

ところが、こちらではお正月はかなり軽く扱われています。大みそかに一応カウントダウンはありますが、それほど危機迫るものはありません。友だちや恋人が飲んで騒ぐだけ。それに、一夜明けたお正月はまったく普通の日で、特に何もありません。

そうやって始まった新年ですが、赤ちゃんだった息子がすっかり歩けるように成長し、より一層目が離せなくなりました。24時間監視状態というのでしょうか。一瞬たりとも気を抜くことはできません。

けれど、母親というのはそういうようにできているのか、そんな常識では耐えられないような状況にも順応できてしまうのです。お腹はすかせるし、おむつを替えてあげないといけないし、眠らせないといけないし、相手もしないといけないけれど、ほかに娯楽のないヨットの上ではそれがほどよい刺激となって、むしろ楽しくて仕方がなかったのでした。

また、ゴリラの親子の影響から、「かつぐのに重くなったら自分で歩く時期」というのを実践したために、ちっちゃい頃からわたしと同じ距離を小さな足で歩き、荷物も分担して持ってもらったせいか、二人揃って同時に一緒に「くたばる」というリズムもできていました。そのお陰か、ママは疲れているに、赤ちゃんは元気いっぱいという状態には、わたしの場合幸運なことになることはありませんでした。

ところで、ニュージーランドの海には、マッスル貝という貝があちこちに生息しています。この貝をゆでたり、バターで焼いたりするととってもおいしいのです。それを毎朝息子ととりに行くのが日課になりました。

また、自然が豊富なので、少し歩けば野生のハーブや菜っぱが収獲できました。今はさすがにもうしなくなりましたが、幼いころの息子は、道に生えている草をつかんでは「これ、食べられるかな」が口癖でした。

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ライタープロフィール

山下なおこさん/女性/年齢:30代/ニュージーランド滞在(16年以上)、自然と素朴な料理が好きな女性です。