トロピカル・タイム〜南太平洋航海記〜
ニュージーランドからヨットで南太平洋をクルージング。4年間の南太平洋航海記

何にもないけど何だか楽しいヨット暮らし

2010/09/25

2002年 7月
日本ではヨットで暮らすなんて想像がつかないかもしれません。けれど、ニュージーランドの場合は、ヨットで暮らせば、家賃がいらないという考え方があります。もちろん、マリーナなどに停泊するのではなく、錨をおろして海に浮いている状態での話ですが。そのため、あちこちにヨットで暮らしている独身男や家族がいます。ただ、独身男の場合、あまりにも自由であるために、かなり偏屈になってしまった人にずいぶんあいましたが・・・。

さて、ヨットにはいろんな種類があります。競技用のヨットの場合は、軽量重視なのでオープンな形になっているのが普通です。けれど、外洋に出られるボートにはキャビンというものがついています。

キャビンは密閉できる部屋という意味ですが、その中にはクッション付きのベンチのようなものやキッチンなんかがあり、生活ができるようになっています。豪華なものになるとトイレやシャワー、個室、テレビ、PCなどいろいろと便利なものがあるのですが、わたしたちのヨットは原始的で必要最低限のもの以外は何もありませんでした。電気もランタンを使うような生活でした。

元々スーツケースひとつだけの私財しかなかったわたしたちは、調理道具や寝具など、とりあえず生活していくのに必要なものだけをかき集めて住み始めました。

ヨットは車と違って、買ったらすぐに使えるというわけではありません。一度海に出れば自分で何もかも解決しないといけないわけで、あらかじめ隅から隅まで知っておく必要があるのです。故障したからといって、電話してすぐに誰かが来てくれるわけではないのです。

そのため、わたしたちは購入後、数カ月はヨットのメンテナンスで日々が過ぎていきました。陸に揚げて、手直ししたり船艇のペンキを塗り替えたりしているうちに、ほんの短期間で一気にヨットと関わる人たちと出会うことになりました。

早期定年して老後を海に捧げたい人、いつかは家族を南の島へ連れて行きたい人、快適に暮らせるヨットが欲しい人など、陸の生活ではまず接触することのない人と話せることになったのです。

ただ、陸にヨットを揚げて手入れをしている人々の中には、その居心地のよさに慣れ切って、実際に海に出ない人も結構いるようでした。ヨットを手に入れたばかりのわたしたちはそこの人間関係は楽しかったけれど、いついてしまうことを恐れ、馬車馬のように毎日働き続けたのです。

そして、ひたすらヨットを手直しし、「ほぼいい感じ」になったので、ちょっとだけ遠くの島へセーリングに出かけることになったのです。

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ライタープロフィール

山下なおこさん/女性/年齢:30代/ニュージーランド滞在(16年以上)、自然と素朴な料理が好きな女性です。