- トロピカル・タイム〜南太平洋航海記〜
- ニュージーランドからヨットで南太平洋をクルージング。4年間の南太平洋航海記
ヨット、作ってあげる
2010/09/16
手作りのヨット
わたしの目の前に、ある日スーッとヨットが横切ったのです。真っ白な帆を張った世にも美しいシェイプのヨットが音も立てずに進んでいったのです。
日本で「ヨット」といえば、ほとんどの人の頭の中に「裕福」なイメージが思い浮かぶのではないでしょうか?お金持ちの道楽?水辺のない町に育った庶民のわたしには、ヨットはまったく現実味のない代物でした。そのために憧れなんかも特になかったのです。
それが、偶然ニュージーランドの湖が眼下に広がるアパートに引っ越したことから、ヨットを生で目にしてしまったのです。そびえたつ山並みと澄み切った水をたたえた湖、その光景にヨットの白い帆はあまりにも「できすぎ」ていました。
わたしは、風を切る爽快感のあるスポーツとしてヨットに興味を持ったのではなく、単にその姿の美しさだけでヨットに乗ってみたいと思ったのです。船上でどんなに激しく苦しい戦いが行われているかなんて、当時は知る由もなかったのです。
ごく普通の女子学生の日々を送り、スポーツやアウトドアなどにこれといって無関心だったわたしは、ニュージーランドが世界に名高いヨット天国だということをこちらに来てから知りました。そしてヨットはけして上流階級の特権ではなく、自家用車とさほど変わらない扱いを受けていることもわかったのです。値段もピンからキリまで。だから、ここでは誰でもその気さえあればヨットに関わる機会はあるのです。
けれど、はたちそこそこで結婚したばかりのふたりは貯金ゼロ。どんなに安くても、ヨットを購入するなんてことははなから考えることはなかったのです。
しかし、若さというのはすごいものです。新妻の夢をかなえたいと願う夫が、「だったら、作ってあげる」といい出したのです。それが、今思えば、わたしをヨットの世界に引き込んだ最初の最初のスタート地点だったのです。
そして、夫は、まるで模型を作るかのように全長28フィート(8メートル強)、2本マストのヨットを裏庭でせっせと建造し、セーリング未経験にもかかわらず、自転車に乗るかのように入水した瞬間から湖にこぎ出したのです。
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山下なおこさん/女性/年齢:30代/ニュージーランド滞在(16年以上)、自然と素朴な料理が好きな女性です。