トロピカル・タイム〜南太平洋航海記〜
ニュージーランドからヨットで南太平洋をクルージング。4年間の南太平洋航海記

みんなで子どもを育てる島

2010/11/01

2003年 8〜9月
そんな島で、現地の人と触れ合う機会がありました。主要都市とは違う離島では、外国人自体とても珍しいのですが、赤ちゃんがいると警戒されることなく仲よくなれます。ただ、ヨットに遊びに来る?と尋ねると、嫌だと断られましたが。別に、誘拐するつもりなんかないのに・・・。

島人たちは普段は島独自の言葉を用いています。ところが、公用語である英語とフランス語も一応学んでおり、めったに来ることのない外国人とコミュニケーションが取れるのです。これには驚かされました。「うまくないから」とはにかみながらも、海外未経験の日本人よりもはるかに理解しています。

さて、近年出産の高齢化が進んでいますが、バヌアツも同じような現象が見られるようです。ただ、先進国のように35歳を超えて初産ということはなく、大体30歳くらいで最初の出産をするようです。お見合い結婚も多く、親と親が決めた縁談で結ばれるケースもよくあるようです。

バヌアツの中心都市には電気やガス、水道がありますが、離れた島には何もありません。もっとも原始的な島の場合、椰子の葉を利用して作った屋根だけの家が、転々としているだけです。そこに、石を積んでかまど風にしているキッチンエリアがあるくらいです。

雨風を防いで眠るために一応屋根を作ってあるけれど、家というよりもシェルターのような感じだといえるでしょうか?

昼間は、男は釣りやココナッツ農場、大工仕事のようなものに出かけ、女は畑と家事、仕事が終わればビーチでたき火をし、近所の人と語り合う。暗くなって眠くなったらシェルターに入るという生活を送っているようです。

島では、外で子どもたちがみんなで集まって遊びます。ひとりでいてもつまらないし、家には何もないので、外でみんなといるほうがよいのでしょう。赤ちゃんも大きな子どもが面倒をみるようにできているようです。相当小さな子どももいますが、お母さんがそばにいることはなく、大きめの子どもの後にくっついている光景をよく見かけました。

発展途上国では、子どもは島や村の宝として扱われることが多いようです。これは特別扱いして甘やかすということではなく、島や村全体が一緒に育てるという気持ちがあるのです。母親ひとりの責任ではなく、みんなの子どもだという感覚を持っているのでしょう。そのお陰か、母親は畑にも行けるし、狭い個室で赤ちゃんとふたりきりで鬱になるような、育児ノイローゼも起こらないようです。

もちろん、平和一色というわけではなく、DVや児童虐待、酒乱(カバ乱?)や薬物乱用などの問題はあるようです。「平和だね、パラダイスだね」と感心するわたしに、ゴシップ好きらしいバヌアツ婦人が、「あそこの旦那はねぇ〜」といろいろ教えてくれましたが、ゲッと思うようなホラーも含まれるので、ここでは触れないことにします・・・。

仕事に追われていなくても、住居や食べ物に困らなくても、驚くほど美しい海や自然に囲まれていても、人間の心は蝕まれることがあるようです。

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ライタープロフィール

山下なおこさん/女性/年齢:30代/ニュージーランド滞在(16年以上)、自然と素朴な料理が好きな女性です。