トロピカル・タイム〜南太平洋航海記〜
ニュージーランドからヨットで南太平洋をクルージング。4年間の南太平洋航海記

世界上もっとも幸せな国…バヌアツ(2)

2010/10/21

2003年 8月
わたしたちは、ニューカレドニアから5日ほどかけてバヌアツにやってきました。この国は、またしても期待を裏切ることはありませんでした。カレンダーの光景はここにもありました!

バヌアツの場合、ニューカレドニアよりはるかに素朴で、洗練されたビルなどはありません。何を考えているのか、首都ポートビラに高層ホテルを建ててしまった人がいるようですが、それ以外は低い建物ばかり。また、街ゆく人も白人より現地の人が圧倒的に多く、南の島に来たなと感じされてくれます。

この町にも中心部にマーケットがあります。このマーケット、売っている商品は島で取れた果物や野菜、パンなどですが、ヌメアの値段の10分の1程度なのです。とにかく安い!海外のバックパッカー向けの旅行本にも記されていますが、バヌアツの価格は南太平洋全体の国々から見てもずば抜けて低いのだそうです。

ニューカレドニアとバヌアツのマーケットの大きな違いは、バヌアツのマーケットの人々はのんびりしていて大らかだということです。それに比べて、ニューカレドニアの人々は切羽詰まった顔をしているのです。

わたしが考えるに、この違いは、バヌアツのマーケットが24時間営業であること。つまり、ヌメアのように午前中だけで売り切って店じまいしなくてよいので、「まぁ、そのうち売れるかあ〜、売れなきゃ自分で食べるかあ〜」的なノリなのでしょう。さらに、そこで売り当番は寝泊まりしており、島なり村なりから、日に数回食糧や商品が運びこまれるために刺激もあるようです。帰宅すれば、素朴とはいえ、家賃のいらない寝起きできる場所もある。つまり、生活のための必死さがなく、また多くの人の共同作業だというのが個々のストレスを軽減しているのかもしれません。

ただ、若く、大志を抱いている人にはこの生き方が合わないこともあるようです。一攫千金とはいかなくとも、先端技術を手に入れたいとか、外国に行ってみたいとかでお金が欲しいと感じることは多いようです。どこの世界でも、憧れのカレンダーの景色の中にいても若い人の興味や好奇心は変わらないということでしょう。

ただ、つい最近のテレビのドキュメンタリーで、そんなバヌアツの男たちが、イギリスを訪れるという企画がありました。10〜20代の青年たちと長老と呼ばれる多分50代の男性のグループでした。

その中で、彼らは多くの素朴な疑問を口にしました。まず、ありとあらゆる無駄。かなり大きな邸宅に滞在したのですが、彼らは「すごい」と感嘆するのではなく、「何で、こんなに必要なの」と単純に疑問に感じたのです。

中でも、印象的だったのは養豚場でのシーンです。イギリス人の牧場主が人工的に雌豚を妊娠させ子ブタを産ませるという方法を目の当たりにしたバヌアツの人々は大きなショックを受けました。「なぜ?」を連発し、目をそむけるバヌアツ人に対し、イギリス人は「最大限の利益を得るため」と当然のように答えます。

ほんの少しのやり取りを見ただけですが、彼らは先進国に憧れを抱いて一度は出て行っても、最終的には「世界でもっとも幸せな国」である自分の国に戻ることになるのかもしれません。

先進国から来ているわたしは、自分勝手にそうなることを祈るばかりでした。

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ライタープロフィール

山下なおこさん/女性/年齢:30代/ニュージーランド滞在(16年以上)、自然と素朴な料理が好きな女性です。