トロピカル・タイム〜南太平洋航海記〜
ニュージーランドからヨットで南太平洋をクルージング。4年間の南太平洋航海記

どんどん過酷になっていく・・・

2010/09/27

2002年 10月
さあ、待ちにまった遠出です。遠いといっても、そんなに離れてはいなかったのですが。ところが、その日の天候が荒れに荒れたのです。目的地にはいつまでたってもつかず、暴風の上、お腹の大きい妊婦をかかえた夫は、消耗しボロボロになってしまいました。

ようやく到着したものの、何も食べずに、1日中バース(ヨットの中にあるベッドのようなもの)に横たわって起きてこない夫に、「もういいよ、セーリング諦めていいよ。南の島も飛行機で行くよ」とわたし。

かくして、ふたりはヨットから降り、小さな家に移り住み、かわいい赤ちゃんといつまでも幸せに暮らしましたとさ。

・・・とはならなかったのです。

バースから出てきた夫は開口一番「エンジンを取り外す」と言い出したのです。ある程度の大きさのヨットにはエンジンがついています。これがあれば、障害物の多い場所への出入りの際や緊急時、無風時など役に立ちます。

しかし、同時に「エンジンがあるから何とかなる」と考える人も多く、長年セーリングの経験があっても実際には技術が伴っていないことも少なくないのです。夫は、今回の荒れた航海で、「その頼りの元のエンジンが、もし動かなかったら・・・」ということを考えたようでした。

すぐに、夫はエンジンを捨て、それからひたすら「自主トレ」に励みはじめました。そして、ものの見事にヨットを操れるようになったのです。ただ、風だけが頼りになってしまったわけで、もうじき生まれそうなお腹を見ながら、妊婦は途方にくれたのでした。

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ライタープロフィール

山下なおこさん/女性/年齢:30代/ニュージーランド滞在(16年以上)、自然と素朴な料理が好きな女性です。