トロピカル・タイム〜南太平洋航海記〜
ニュージーランドからヨットで南太平洋をクルージング。4年間の南太平洋航海記

ヨットならタダで行ける

2010/09/20

あれよあれよという間に完成したヨットのお陰で、わたしは晴れて「ヨットオーナー」となり、湖に浮かぶヨットたちの仲間入りを果たしたのでした。夫は、いいだしっぺのわたし以上にヨットという乗り物に興味を持ち、暇があれば誰に教わるでもなく、セーリングへと出掛けて行きました。そんな度重なる実地訓練のお陰で、航海技術もあっという間に上達していったのです。

それなりに満足しながら過ごしていたのですが、夢見がちな新妻はある時「南の島で暮らしたい、椰子の木や熱帯魚に囲まれたい」なんていう無責任なつぶやきをしてしまったのです。忘れかけていたカレンダーの写真が、ふたたび、脳裏にちらつくようになっていたのです。だけど、南の島は原住民はともかく、外国人には安く住める場所ではありません。1週間くらいのホリディならともかく、長期滞在となると相当なお金が必要です。

それを耳にした夫はしばらく考えた末、「ヨットだったら南の島にもタダで行けるし、タダで滞在できるから、作ってあげる」といいだしました。

そんなわけで裏庭造船が始まったわけですが、今回は湖で遊ぶヨットとは違い外洋の荒波に耐えうる必要がありました。また強度を重視して鉄を素材に選んだばっかりに、いろいろと問題が浮上し、4年ほどの歳月をかけたものの完成をみることはありませんでした。

この期間、時間と収入のほとんどを制作に費やしたショックから、わたしたちの心はややぺしゃんこになり、ヨットへの情熱はいったん消えてしまったのです。

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ライタープロフィール

山下なおこさん/女性/年齢:30代/ニュージーランド滞在(16年以上)、自然と素朴な料理が好きな女性です。