イギリスってどんな所?
イギリスに長期滞在したそまちひろさんがイギリスについて紹介します。

イギリスでは英語はひとつじゃない

2016/01/04

中学校からアメリカ英語で英語教育を受ける日本人は、イギリス英語に対して苦手意識があるようで、「聞き取れない」と言う人がたくさんいます。でもひとくちに「イギリス英語」と言っても、地方によってたくさんの種類があります。

例えば、BBCニュースで耳にするようないわゆるクイーンズ・インギリッシュは、子音の音がはっきりしていて、母音が短く、比較的聞き取りやすいと思います。ゆっくり喋ってもらいさえすれば、結構簡単にコミュニケーションできると思います。

ただ、クイーンズ・イングリッシュを話すのは中流以上の、ロンドン近郊出身の人たちだけ。あとはもう、地方によって本当に多彩なアクセントが付いてきます。例えば北イングランドの大都市、マンチェスターは、独特のこもるような破裂音がとても聞き取りづらいことで有名。

また、イングランドの西にあるウェールズ地方では、ウェルシュというゲール語由来の言葉がまだ普通に話されていて、その歌うようなアクセントが英語にも乗り移り、とても不思議な抑揚に聞こえます。

ロンドンにしたって、「マイ・フェア・レディ」で有名なコックニーという下町訛りが生きていて、これはオーストラリア英語に近いアクセントです。「エイト(8)」が「アイト」、「ビハインド(後方)」が「バハインド」になるなど、単語によってeとaの区別がなくなるのが大きな特徴。しかもマシンガンのように早口。

また、スコットランド地方の訛りもかなりきつく、アメリカ人は同じ英語なのにスコットランド人の会話を理解できない、という人多数。ただ、スコットランド人もそれは承知しているようで、同じ英語なのにバイリンガルのように「標準に近い英語」と「地元民だけで話す英語」を使い分けるんです。そのため、普段は普通に会話できるスコットランド人の友人が、スコットランド人同士で話している内容はまったく分からない、という不思議な現象が起こります。

どんどん国際化してきていて、「どれが正解」という境界があまりない英語。発祥の地のイギリスですらこんな調子なんですから、イギリスに行ったら堂々と日本語アクセントの英語で話しかけていきましょう!

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ライタープロフィール

そま ちひろさん/女性/年齢:30代/中南米(2013年現在)/フリーライターおよび翻訳業。お気に入りの国はインド、住んでみたい国はスペイン、そして現在は南米を縦横断中、という矛盾だらけの人生を満喫しています。著作に「ヘラクレイトスの水」(大宰治賞2009収録)。