イギリスってどんな所?
イギリスに長期滞在したそまちひろさんがイギリスについて紹介します。

イギリス人とロイヤルファミリーの複雑なカンケイ

2015/12/17

2012年6月、エリザベス女王即位60周年記念、いわゆるダイヤモンド・ジュビリーの式典がロンドンでありました。このニュース自体は、ふーんそうなんだ、長いこと女王してはるんやなあ、くらいに思っていたのですが、わたしがびっくりしたのはその何日か後に、フェイスブックを見たとき。なんとほとんどのイギリス人のフェイスブックフレンドが、実際に女王のパレードを見にはるばるロンドンへ行ったり、「Happy Jubilee!」と書き込むなど、何かしらの反応を見せていたのです。

なぜ驚いたのかと言うと、彼らのことを全員、王室にはまったく関心のないタイプの人たちだと思っていたからです。だって身体のあちこちにタトゥーをして、インドでヨガを極めようとしていた人や、東南アジアをヒッチハイクで周って、果てはインドネシアのスマトラ島の奥地で現地の人と一緒に暮らしていた人など、極端でオルタナティブな人たちですよ。ユニオンジャックを女王のパレードに向かって嬉々と振っている写真を見て、何故かこっちが赤面してしまいました。

イギリス人と王室の関係って、どうにも良く分からないものがあります。普段は結構バカにしているような態度を取っていても、実は王室のイベントやスキャンダルに興味深々なんですよね。これはいわゆるミドルクラスの教育のある人に多い傾向だと思います。わたしのイギリス国籍の彼氏も、「王室なんていらないよ、税金の無駄遣い」とことあるごとに言うものの、ロイヤルファミリーで誰と誰が離婚してて、誰が問題児で、誰と誰が仲が悪くて、などと完璧に把握しています。

それもそのはず、イギリスのマスコミの王室ネタはすごくて、テレビドラマなみの下世話な話を次々書きたてています。例えばヘンリー王子の恋人の姉妹がウィリアム王子の元カノで、キャサリン妃はふたりの交際に反対している…とか。

70年代にはイギリスのパンクバンドが、「女王は人間じゃない」「女王よ、あんたに未来はない」という過激な歌詞の歌を発表して、放送禁止になったりもしていました。こんなこと、日本の皇室では考えられないですよね。バンドは英国諜報部にマークされたり、別件逮捕されたりもしましたが、特にそれが原因で音楽業界から干されるということもありませんでした。

いろんな人のいろんな言動も大らかに流してしまうところに、王室の人気の秘密があるんでしょうか。

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ライタープロフィール

そま ちひろさん/女性/年齢:30代/中南米(2013年現在)/フリーライターおよび翻訳業。お気に入りの国はインド、住んでみたい国はスペイン、そして現在は南米を縦横断中、という矛盾だらけの人生を満喫しています。著作に「ヘラクレイトスの水」(大宰治賞2009収録)。