イギリスってどんな所?
イギリスに長期滞在したそまちひろさんがイギリスについて紹介します。

同じ国のようで違う国、イギリスとスコットランド

2015/12/29

最盛期には「世界の半分」と言われるほど広大な植民地領土を誇ったイギリスですが、現在は島国の本国と、アイルランドの北側少し、お金持ちがホリデイ用に確保しているとしか思えない南洋の島々、と大変控えめな領土面積になっています。

実はイギリスのその領土、更に小さくなるかもしれないって知っていました? 日本では「イギリス」とだけ呼ばれることが多いですが、正式名は「ユナイテッド・キングダム(連合王国)」。スコットランド、ウェールズ、イングランド、北アイルランドの各地域から成立している国です。

けれど、今年2014年の9月に、スコットランドの分離独立を決める住民投票が行われるんです。これでスコットランドの分離独立が採択されると、イギリスとスコットランドは別の国になるんです。

スコットランドは元々イングランドとは別の国でした。しかし連合を迫るイングランドに経済面で追いつめられ、1707年に連合法が成立し、スコットランド議会が消滅しました。これでスコットランドは連合王国の一員となり、「スコットランド」という国は消滅しました。

しかし裁判制度、教育制度などは独自の体系を保ち、1970年代には独立機運が高まり、スコットランド議会が復活。通貨も、スコットランドポンドのお札はイングランドのものとはデザインが違うんですよ。

ちなみにいわゆるブリティッシュポンドは国中どこでも通用しますが、スコットランドポンドはスコットランドでしか使えません。スコットランドからイングランドに戻る際は、スコットランドポンドからブリティッシュポンドへの換金をお忘れなく。

スコットランド人の分離独立についての思いは複雑なようです。リベラルな人はアイデンティティ的には独立したいと言いますが、経済的には難しいだろう、と冷静な分析をしています。独立後の通貨は安定したポンドが使えなくなること、また税収の面でもイングランドに頼ることが多いため、とてもスコットランドだけでは国として回らないだろう、と。実際、アンケートでは独立賛成派は30%に留まっているそう。

つまり1707年と同じく、またもや経済面が独立を阻んでいるわけです。歴史は繰り返すと言いますが、その通りですね。

16歳以上のスコットランド在住市民であれば、誰もが参加できるというこの住民投票。結果を見守りたいところです。

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ライタープロフィール

そま ちひろさん/女性/年齢:30代/中南米(2013年現在)/フリーライターおよび翻訳業。お気に入りの国はインド、住んでみたい国はスペイン、そして現在は南米を縦横断中、という矛盾だらけの人生を満喫しています。著作に「ヘラクレイトスの水」(大宰治賞2009収録)。