- シャーロック・ホームズをめぐる旅
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食事はクラブで?
2010/09/17
後年のイギリスのミステリーとくらべると、ホームズのシリーズには、ほとんど、いやまったくといっていいほど、「グルメガイド・ショップガイド」がありません。靴をどこの店でオーダーしたとか、夕食はどこの店で何と何を食べ、ワインは何を飲んだとか――といったくだりがないのです。
しいていえば、『瀕死の探偵』の最後、「シンプスンで何が滋養になるものを……」ぐらい。これは、ロースト・ビーフで有名な、シンプソンズ・オン・ザ・ストランドのことでしょう。あとは、『高名な依頼人』の「リージェント街のカフェ・ロイヤル」。いえ、カフェ・ロイヤルの前で襲われたのであって、ここで食事をしたというわけではありませんね。
シンプソンズにしてもカフェ・ロイヤルにしても、大した高級店。私は、店の前を通るだけにしておきます。
ホームズの時代、イギリスの紳士が食事をとるのによく利用していたのは、レストランやホテルではなく、会員制の「クラブ」だったはず。ホームズのシリーズにも、「クラブ」はよく登場します。たとえば、ホームズの兄・マイクロフト(マイクロソフトとつい書いてしまいそう)が創立メンバーに名を連ねているディオゲネス・クラブ。これは架空のクラブですが、今日でも、ペルメルとそれに交差するセント・ジェイムズ・ストリートのあたりに行けば、往時をしのばせるようなクラブが見られます。
といっても、「〇〇クラブ」などという看板を出しているわけではないので、その外観から、「どうやら、ここはクラブらしい」とアタリをつけるしかないのですが。たいてい19世紀半ばごろに建てられたとおぼしき、概して重々しい建物。看板がないことで、逆に「クラブなんだろうな」と察するわけです。
ロンドンで一番古く、かつ、悪名高かったクラブが「ホワイツ」(セント・ジェイムズ・ストリート37〜38番地に現存します)。18世紀は博打のメッカで、「もし、このクラブの前で行き倒れた人がいても、『助かるか』『助からないか』の賭けの決着がつくまで、放っておかれるだろう」といわれたところです。もっとも、このイギリス人の賭け好きの遺伝子は、いまでも「ブックメーカー」に集まる人たちに受け継がれているのですが。
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オオタクーミンさん/女性/東京在住、もしかして「鉄子」と「歴女」のさきがけだったのかも知れない、ぎりぎりアラフォー世代のライターです。小さいころから、愛読書の1つが時刻表で、プライベートの国内旅行には、たとえ北海道を旅するのにも、飛行機を使うなんてことは、はじめから考えない、まったく日航を応援してない日本人です。