トロピカル・タイム〜南太平洋航海記〜
ニュージーランドからヨットで南太平洋をクルージング。4年間の南太平洋航海記

人魚が泳ぐ海

2010/11/04

2003年 8〜9月
バヌアツには豊富な海洋生物がすんでいます。色とりどりの熱帯魚はもちろん、ウミガメもうようよ泳いでいます。そんな中で、ひときわ心を揺さぶるのがジュゴンかも?バヌアツのエピという島に、このジュゴンが生息しています。

ジュゴンは鯨と同じ、海にすむ哺乳類です。牛というかゾウのような顔をしている太くグレーのような色をした生き物です。オルカやイルカのような艶やかさはなく、皮膚はたるんでブヨブヨしています。

こう書くと、グロテスクな醜い物体のように思われてしまうかもしれません。けれど、実際に会ってみると、何とも愛らしい風貌のかわいい(巨大だけど)生き物なのです。

その昔、ポルトガル人の海洋冒険家がジュゴンを見て「人魚だ」と思ったという伝説が残っています。それは、ジュゴンには人間と同じ位置に乳房が2つあり、授乳する際に、人間の母親のように子どもを抱き抱えて与えるからのようです。もっとも、荒波の中、男ばっかりで何カ月も航海していれば、何でも「女」に見えてしまうかもしれませんが・・・。

そんなミステリアスなジュゴンですが、その肉がおいしかったばかりに、どんどん捕獲されて食べられてしまい絶滅の危機にさらされています。

ジュゴンの寿命は70年以上と長いのですが、繁殖率は低く、100頭いても子孫は5頭ぐらいしか誕生しないのだそうです。つまり、たとえメスとオスが数頭いても、必ずしも繁栄するとは限らないのです。

バヌアツの場合も、ジュゴンが減り、数頭になった時点で保護を決定したようですが、時すでに遅し、わたしが訪問した時点ですでに最後の1頭になっていました。

わたしの出会ったジュゴンは、フレンドリーで人を恐れずに接近してきてくれました。ただ、巨大な体なので、かなり怖かったですが・・・。あの子は今頃どうしているのでしょう?仲間が増えているとよいのですが。

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ライタープロフィール

山下なおこさん/女性/年齢:30代/ニュージーランド滞在(16年以上)、自然と素朴な料理が好きな女性です。