トロピカル・タイム〜南太平洋航海記〜
ニュージーランドからヨットで南太平洋をクルージング。4年間の南太平洋航海記

最後のチャンスかも

2010/09/22

小さな中古ヨット

小さな中古ヨット

2002年 5月
その後、しばらくヨットとは縁のない生活を送っていました。新婚から7年ほどの月日が経過していました。そんなある日、妊娠が発覚したのです。

さて、子供が生まれるとわかったら、大抵の場合、いろんなことが脳裏をよぎるとこになるでしょう。家族のできる喜びのほかに、自由がなくなるとか今後の仕事の不安や経済的な問題なんかを考えて、ネガティブになってしまう人もいるかもしれません。

わたしたちの場合は、これが「今現在の生活を変えるチャンスかも」と考えたのです。わたしはきまじめで、一度仕事を始めるとなかなかやめることができません。けれど、妊娠は辞職願を出す格好の理由になると思ったのです。けれど、その後どう「変える」んだか、具体的なアイデアはまったくありませんでした。ただ、夫はとりあえず住む場所を変えようと思ったようです。

そこで、熱帯好きのわたしのためにオーストラリアのケアンズなんかに移住するとか、とりあえず子供に日本の文化を触れさせるのもいいか?など、いろんな思考が頭をよぎりました。けれど、どちらの国も何かがしっくりこないのです。ふたりとも自由気ままな生き方をしてきたために、孫が誕生したからといって、いまさらお互いの家族に干渉されるのも嫌だという気持ちもありました。

そんな時、突然夫が「いいものを見つけた」といい出したのです。何の説明もなく、連れて行かれた場所には1艘のヨットが浮かんでいました。

それは南太平洋の航海から帰国したばかりの船でした。70年代に建造されたコンクリート製のとても小さな中古ヨットでしたが、外洋ボートとしては破格値で実際に外洋に出た実績に飛びつき、わたしたちは「これだ」と思ったのです。

そして、その日のうちにヨットに移り住んだのでした。

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ライタープロフィール

山下なおこさん/女性/年齢:30代/ニュージーランド滞在(16年以上)、自然と素朴な料理が好きな女性です。