トロピカル・タイム〜南太平洋航海記〜
ニュージーランドからヨットで南太平洋をクルージング。4年間の南太平洋航海記

寒い寒い、海がどんどん緑になる・・・

2010/11/10

2003年 11月
たっぷりと食料を買い込んだわたしたちはニュージーランドに向かって、船を南に走らせました。

地球は緯度が高くなるほど海が荒れるといわれています。赤道は無風地帯となっており、風がなく、波が立ちにくいのです。風が頼りのヨットの場合、下手をすれば何日も前に進めないこともあります。

けれど、赤道から離れると、徐々に風が出て波も出てくるのです。そして、30度くらいがご機嫌で、そこからうなる40度、吠える45度(だったけ?)と激しい波風になるのです。

ニュージーランドは南緯35度から45度のあたりに位置しています。ニューカレドニアは、ほかの南太平洋の島々よりやや南寄りで南緯21度程度。

余談ですが、ニューカレドニアはほかの島々と違って年中熱帯というわけではありません。6〜8月頃は肌寒く、イメージしているような暑さはないのです。泳ごうと思えば泳げますが、水から出ると肌寒く、夜はやや冷え込みます。バヌアツはやや緯度が低いので、ニューカレドニアよりはましですが、それでも7〜8月は涼しいと思っておいたほうがよいでしょう、念のため。

ニュージーランドからニューカレドニアに来た際には、基本的に楽なセーリングになっていったわけです。最初は大変だったけど、だんだん温かくなって、風も穏やかになっていったということです。

しかし、帰りはその反対。ニュージーランドは夏に向かっているとはいえ、相変わらず寒いことには変わりがありません。風も強くなっていきます。とはいえ、ニューカレドニアにいるとサイクロンにのみ込まれてしまうかもしれないので、観念して出発しました。

帰りの航路は行きよりも余裕で、それでも2週間近くかかって無事に帰国することができました。

ニュージーランドの海域に入って思ったことは、もちろん寒いということですが、海が緑色になっていくのです。南太平洋の島々の水は青と青緑といった感じでしたが、ニュージーランドは緑なのです。

さらに、島の木々の緑がまぶしい。ニュージーランドの最初の港であるオプアは、都会ではない場所にあって、周囲が豊富な緑に囲まれています。初めてニュージーランドを訪れた外洋船の人々は、きっとこの緑の多さに驚くことでしょう。

ただ、この美しい緑を維持している国の入国審査は厳しく、徹底的に調べられることになりました。

ヨットで入国する場合、空港のように窓口に並ぶのではなく、入国管理官がヨットにまで出向いてきます。そこでパスポートやビザを確認し、荷物の検査をするのです。

ちなみに日本の空港の入国時の荷物検査は、ないに等しいといってもよいでしょう。よほど挙動不審でない限り、スーツケースを開けられることなんて、まずないはず。けれど、ニュージーランドは違います。とても厳しく、空港でも開けられることがほとんどです。

これは、ほかの先進国で行われている違法薬物の摘発というよりも、細菌や害虫の侵入を防ぐのが最大の目的なようです。食べ物はもちろん、靴やテントの泥も駄目。ゴルフのクラブもチェックされます。

この徹底ぶりが、すばらしい自然維持につながっているのです。わたしたちもせっかくニューカレドニアやバヌアツで購入した食料を半分くらい没収されてしまいました。

生ものはもちろん、缶詰であってもニュージーランドかオーストラリア産しか駄目。こんなことなら、大事に少しずつではなくて、もっとお腹いっぱい食べとけばよかった・・・。

ちなみに、お鍋に入っていてすでに火が通っている場合は、見逃されるらしく、知人のヨット仲間は検査官の目の前で、一気にあまっていた野菜や缶詰を煮込みだしたとか。

そんなこんなで、わたしたちの第1回目の外洋は無事に終了したのでした。そして、また、ニュージーランドのおなじみの海で、2度目の夏を過ごすことになりました。生まれたばかりだった坊やもようやく1歳になり、ますますセーリング生活をにぎやかにしてくれ始めたのでした。

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ライタープロフィール

山下なおこさん/女性/年齢:30代/ニュージーランド滞在(16年以上)、自然と素朴な料理が好きな女性です。