アルゼンチンってどんな所?
「知らないと大損、アルゼンチンのブルーレート」「ビールとワインの街、サルタ」「アルゼンチンの物価感覚」「アルゼンチン国内の交通機関」などアルゼンチンについて紹介します。

アルゼンチン国民の中に今も根付く、エビータ信仰

2016/09/05

アルゼンチン国民の人気が高いエビータ

アルゼンチン国民の人気が高いエビータ

「エビータ」という映画を観たことはありますか? マドンナが主演のハリウッド映画なのですが、アルゼンチンの聖母と呼ばれた大統領夫人、エバ・ペロンの生涯を描いた物語です。

エバ・ペロンは1919年、アルゼンチンの片田舎の貧しい家に生まれ、15歳のときに女優を目指してブエノスアイレスに上京します。ラジオドラマなどで活動している最中、当時軍事政権の副大統領だったホアン・ペロン大佐と出会い、彼の愛人となります。

第二次世界大戦直後にクーデターが起き、ペロン大佐が投獄されると、労働者階級に人気のあったエビータはペロン釈放を呼びかけて活動。それが実り、ペロン大佐が釈放されて大統領に就任すると、晴れて結婚しファーストレディの座を射止めました。

人気を利用して政治に介入するようになったエビータは、女性参政権の確立、貧しい労働者階級へのバラマキ政策などで人気を博しましたが、教育のない彼女は結局夫とその支持者の操り人形に過ぎない、と知識階級や上層階級からは批判されていました。また、税金を使いモータースポーツや贅沢な外遊をするなど、公私混同ぶりも一部からの反感を買う原因となっていました。

それでも労働者階級からの人気を背景に、いずれは副大統領に、とまで言われたエビータですが、33歳で末期の子宮がんが発覚、帰らぬ人となります。あまりにも早いシンデレラストーリーの幕切れでした。

エビータの遺体は保存処理をほどこされ、いわゆる綺麗なミイラの常態で国民に公開されました。それくらい偶像崇拝の対象になっていたのです。

存命中は賛否両論あったエビータですが、現在でもアルゼンチン国民の人気は高いそうで、ブエノスアイレスの街のあちこちで彼女のオブジェを見かけます。アルゼンチンの黄金時代と言われた30年代−40年代への感傷のようなものも含まれているのかもしれません。

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ライタープロフィール

そま ちひろさん/女性/年齢:30代/中南米(2013年現在)/フリーライターおよび翻訳業。お気に入りの国はインド、住んでみたい国はスペイン、そして現在は南米を縦横断中、という矛盾だらけの人生を満喫しています。著作に「ヘラクレイトスの水」(大宰治賞2009収録)。