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栃木県/戊辰戦争の「実戦経験」と日露戦争〜宇都宮の街で〜
2010/05/08
宇都宮(栃木県)に行っても、ここが「戊辰の……」と感慨にふけるような雰囲気は感じられません。「ふつうの」北関東の大都市です。お城はどうかといえば、宇都宮城は2代将軍秀忠の暗殺を図ったという「吊り天井事件」のほうが有名だし、今のところ復元もされていません。
しかし、戊辰戦争時、旧幕府軍の混成部隊が斬り込みをかけて、このお城をわずか1日で攻略。いったんは戸田家7万7千石の宇都宮城を分捕っていました。これらの隊士たちは、土方歳三にゲリラ戦や夜襲を仕込まれたようで、そのひとり、桑名藩の立見尚文は、その後の北越の戦でも、さんざん官軍に煮え湯を飲ませています。
その負け戦の官軍方の参謀が、後に政界の重鎮になる黒田清隆(薩摩)と帝国陸軍の大立者になる山県有朋(長州)っていうから、愉快です(どうしても幕軍びいきになってしまう、私は江戸っ子の末裔)。
立見尚文は、西南・日清・日露戦争でもそれぞれ功を立てて、長州閥の強い陸軍のなかで、最後は陸軍大将にして男爵(死後、立見の功績によって継嗣が子爵に昇爵)でした。
司馬遼太郎先生の『坂の上の雲』に登場する立見は、「軍夫のなかに老人がいて、その男は新選組の生き残りだといううわさがあるが、ほんとうか」と幕僚にたずねるのですが、その逸話がほんとうかどうかはわかりません。しかし(小説には登場しませんが)、新選組の原田左之助が、上野の戦の後、清国に渡って馬賊の頭領になり、日露戦争時はゲリラ戦でロシア軍を翻弄したという話は、ほんとう――だと思いたい。
日露戦争では、児玉源太郎、大山巌、東郷平八郎ら、元「官軍」の歴戦の士も陸海軍のトップにいました。彼らが引退してから、日本は負け続け……とは、ただの偶然なのでしょうか。
それはともかく、昇進には薩長出身者が優遇されていたとはいえ、日本帝国陸海軍は実力重視で、出身階級にはとらわれなかった。これだけ?は、明治新政府の正しい選択だったといえますね。当時のヨーロッパは、出身階級が軍隊での階級とイコールなので、将官はみんな貴族か準貴族階級。「やっぱ世襲制っつーのは、モンダイだね」と、宇都宮名物のギョウザをつまみながら、生ビールを一杯。「薩長がぶっ壊した江戸幕府だって世襲制じゃん」と、自分で自分に突っ込みを入れたのでした。
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オオタクーミンさん/女性/東京在住、もしかして「鉄子」と「歴女」のさきがけだったのかも知れない、ぎりぎりアラフォー世代のライターです。小さいころから、愛読書の1つが時刻表で、プライベートの国内旅行には、たとえ北海道を旅するのにも、飛行機を使うなんてことは、はじめから考えない、まったく日航を応援してない日本人です。