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フランス/自分の生首を抱えて歩いた話〜モンマルトルからサン・ドニへ
2010/07/30
せっかくサン・ドニ大聖堂までやって来たのだから、ルイ16世とアントワネットのお墓だけでなく、もう少し観賞(お参り?)していきましょう。とはいえ、7世紀から19世紀の国王まで、お墓の数は大小・形式取りまぜて、79――。
なかでも、圧巻なのは、15〜16世紀の国王・ルイ12世とアンヌ王妃の、ちょっとした礼拝堂かと思うような、2階建てのお墓です。1階には、横たわるふたりの姿と、その周囲を取り巻く、おそらくは聖書ゆかりの人々の彫像群。2階には、祈りをささげるふたりの姿。どれもリアルにつくられていて、細部には精巧なリリーフも。大理石(?)の自然色なので、大がかりな「工芸品」にも見えるのですが、これで彩色を施されていたら、かなりグロテスクなものになったでしょう。
そもそも、このサン・ドニという土地の伝説も、異教徒にとっては、グロテスク。白亜の聖堂「サクレ・クール寺院」で知られる「モンマルトル」の語源は、「殉教者の丘」ですが、ローマ支配下のパリで初めて布教活動をしたという、3世紀の伝説の殉教者サン・ドニが、ほか2名とともに首を斬り取られたことに由来します。
しかし、このサン・ドニの伝説は、ここからが伝説たるゆえんなのです。彼は、切り落とされた首を自分の両腕で抱えて歩き出し、丘を越えて泉のほとりで「洗顔」し、現在のサン・ドニの街まで約6km歩いたところで息絶えたのだとか。絵画などで、聖人としてのサン・ドニ(聖ディオニシウス)は、自身の首を持つ姿に描かれます。
その死からおよそ40年後、キリスト教は公認され、サン・ドニの倒れたあたりに建てられたのが、現在のサン・ドニ大聖堂の前身だと伝えられます。
その伝説から、時をへること1700年。大小の工場や倉庫群がひしめくようになったこの街に、1998年、日本代表が悲願の初出場を果たしたフランス・サッカー・ワールドカップのメイン会場「スタッド・ド・フランス」が建設されました。
フランスは、今なお敬虔なカソリックの多いお国がら。「首を抱えて行ったのなら、サッカーじゃなくて、ラグビーだろうに」などというツッコミは、厳に慎まなければなりません。
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オオタクーミンさん/女性/東京在住、もしかして「鉄子」と「歴女」のさきがけだったのかも知れない、ぎりぎりアラフォー世代のライターです。小さいころから、愛読書の1つが時刻表で、プライベートの国内旅行には、たとえ北海道を旅するのにも、飛行機を使うなんてことは、はじめから考えない、まったく日航を応援してない日本人です。