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イギリス/騎馬像に、なんでわざわざモグラ塚が〜ロンドン銅像事情〜
2010/06/20
ロンドンを歩いていると、「ここにも、そこにも、あそこにも」銅像を見かけます。イギリスの彫刻家は、クライアントに恵まれているようです。ほとんどがこの国の歴代の王さまや軍人、政治家ですが、なぜかリンカーンの銅像も。その近くのパーマストン子爵(19世紀の首相)像は「英国紳士の着こなしの手本」といわれたそうです。
セント・ジェイムズ・スクウェアにある騎馬像は、17世紀の国王・ウィリアム3世(妻・メアリー2世と共同統治)です。その馬の足もとの地面には、やや土の盛り上がった「コブ」のようなものがある。これはモグラ塚であると、現地のロンドン案内の本にあります。すると、そのモグラが何かで活躍した記念なのか、あるいは、きわめてモグラ好きの王さまで、モグラ愛護法でもつくったのか――と、日本人は考えます。
実は、そのモグラ塚に王さまの愛馬がつまずいて、王さまは落馬なさった、いわばその記念?の騎馬像なのです。その傷がモトで王さまは崩御されました。「それを銅像にするかぁ?」と、ツッコミたくなるのですが、それがイギリス人の「ユーモア」なのか。
もっとも、ウィリアム3世は、カソリックのジェイムズ2世を追い出した(名誉革命)ときにオランダからやって来た、外国人のプロテスタントの王さま(イギリス王家との血縁もあり、妻はジェイムズ2世の娘)なので、カソリックからは嫌われていた。というわけで、一部の人たちにとっては、モグラの「活躍」は大いに顕彰されるべきなのかもしれません。その銅像を置いたのが、「聖ジェイムズ」(日本風にいえば、「聖ヤコブ」ではありますが)広場だというのも皮肉です。
チャールズ皇太子とダイアナ妃が結婚式を挙げた(というのももう古い話です)セント・ポール大聖堂の前には、メアリー2世の妹・アン女王の銅像があります。聖堂のほうに背を向けて立っていることに、とくに意味はなさそうですが、17人も出産して、いちばん成長した子どもも11歳で亡くなったという悲しみをまぎらわすためか、とにかく飲みすぎた女王さまらしく、「あの銅像は、(当時あった)ブランデー屋のほうを見ているのだ」とか。
東京・上野の「西郷さん」の銅像は、「世界は見ているのだ」といわれたそうです。さすが西郷隆盛。いえいえ、当時の上野には、西郷隆盛像の視線の先に、「世界」という牛鍋屋があって……という、オチがつきます。
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オオタクーミンさん/女性/東京在住、もしかして「鉄子」と「歴女」のさきがけだったのかも知れない、ぎりぎりアラフォー世代のライターです。小さいころから、愛読書の1つが時刻表で、プライベートの国内旅行には、たとえ北海道を旅するのにも、飛行機を使うなんてことは、はじめから考えない、まったく日航を応援してない日本人です。