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イギリス/ワトソン君のファーストネームは?〜ベーカー街221Bで〜
2010/06/07
ロンドンのベーカーストリート221Bは、いわずと知れたシャーロック・ホームズの住まい。銀行になったそのビルには、ホームズを記念するプレートが掲げられています(ホームズ役者のジェレミー・ブレットが寄贈したとか)。ただ、惜しむらくは、そのプレートが、「実在した人物」のモノではないこと(蛇足ながら、Bは2階という意味です)。
著名人が住んでいた家には、その名前と住んでいた時期を刻んだ円形のブルーのプレートが取りつけてあります。しかし、ホームズのプレートはそれではない。シャレがわかるはずのイギリス人が、ホームズを「架空の人物」扱いしているなんて……。地下鉄ベーカーストリート駅の前には、銅像だって立っているのに。
「ところで、ワトソンのファーストネームって、なんだっけ」と私。「ワトソン?……ジムとかトムとか、ありふれた名前だったと思うけど」と友人。なんだか、ワトソンのファーストネームが気になってしかたがない。でも、本屋に飛び込んで、ホームズものを立ち読みしても、ホームズはワトソンのファーストネームをなかなか呼んでくれません。『ホームズ事典』のような本を見つけて、やっとわかりました。ジョンでした。
親友でも、ファーストネームで呼び合わないのが、当時の英国紳士。召使にしても、小間使いや下僕はファーストネームで呼び、執事は苗字で呼ぶという階級社会でした。女中頭ともいうべきハウスキーパーは、〇〇夫人。未婚でも「ミセス〇〇」です。
子どものころ読んだ『小公子』とか『秘密の花園』とかのお屋敷ものには、礼儀作法にうるさい女中頭の「〇〇夫人」がつきものだけれど、「この人は未亡人なんだろうか、ダンナは出てこないけれど……」と思ったものです。なるほど、日本の大名屋敷でも、年齢に関係なく、女中頭は「老女」でした。
なお、『ホームズ事典』によると、ビクトリア朝のイギリスでは、ワトソン君は日本でいうところの、臨床一般に携わる開業医なので、「ドクター」だけれど、外科専門の勤務医は「ミスター」だったと。これは博士号の有無とは無関係に、「階級」の差なのだとか。貴族は内科医師になっても、外科医にはならなかった由。わかるような、わからないような……。
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オオタクーミンさん/女性/東京在住、もしかして「鉄子」と「歴女」のさきがけだったのかも知れない、ぎりぎりアラフォー世代のライターです。小さいころから、愛読書の1つが時刻表で、プライベートの国内旅行には、たとえ北海道を旅するのにも、飛行機を使うなんてことは、はじめから考えない、まったく日航を応援してない日本人です。