介護の仕事体験記
介護の仕事ってどんなことをするの?良かったことや大変なことは?など介護の仕事体験記を紹介

実際に働いてみて大変だったこと

2011/12/09

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食事介助、入浴介助、トイレ介助でも大変なことは山ほどありました。しかしそんなことは大したことではなかった、と思うような出来事がありました。それは毎日、夕方になると起こりました。原因は、78歳、要介護3のTさんという女性でした。

グループホームの夕方は、かなり忙しい時間帯でした。職員は、洗濯物の取り入れ、買い物、夕食の準備などに追われていました。その忙しい時間帯の中で、Tさんはそれまでも時どき不穏になることがありました。

しかしその都度、話題を変えたり、故郷の話を持ち出したりすれば、機嫌が直りました。しかし、その日は違いました。Tさんは、いつものように、自分の財布が無いのだと言い始めました。私はすぐに話題を変え、Tさんの故郷の栗の木の話をしました。栗の木は、Tさんの思いでの木でした。これまでなら、その話ですぐに機嫌が直っていたのです。

しかしその日、Tさんの関心は財布から離れませんでした。「誰かに盗まれた」と、Tさんが口にしました。勿論、それも認知症の症状であることは分かっていました。それでもそれまで無くなったとしか言わなかったTさんが、盗まれたと口走ったことに、私は一瞬ドキリとしました。

Tさんの言葉は、どんどんエスカレートしました。犯人はここに居る人たちの中の誰かだ、といいました。Tさんは今すぐ警察を呼んでほしいと訴えました。私が呼べないと答えると、Tさんは自分で電話するといって、カウンターの電話に向かって歩き出しました。

私が、電話は使えないとどれだけ言っても、受け付けませんでした。私はもう、何をどうすればいいのか分からなくなって、ただオロオロするばかりでした。

するとそこへ、いつもTさんの隣に座っているAさんが、走りよってきました。Tさんの手を取り、テレビで歌番組が始まったから一緒に見ようと言いました。

するとTさんは、これまでのことを一瞬にして忘れてしまったように、テレビに向かって歩き始めました。私は、もう極限状態でした。ホッとすることはしたのですが、泣き出きたいくらいに疲れていました。それは認知症だと分かっていたのに、対処し切れなかった大変な出来事でした。

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ライタープロフィール

キイチロウ/男性/50代/福井県在住/ごく普通の仕事をしていて、ごく普通の考え方をする、ごく普通の趣味を持った、ごく普通の外見の人間です。ただ他の人よりも少しだけ、人間ウォッチングに優れていると自分では思っています。

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