人生を変える旅をするには
「若いうちの旅のススメ」「旅は新しい自分を見つけるチャンス」「知っておきたい旅のリスク」「現実逃避が人生を変えるきっかけになることも?」「旅に出ようか迷っている人へ」などを紹介します。

若いうちの旅のススメ

2017/12/27

日本の若者の内向き傾向が指摘され始めたのは、就職氷河期が底を打って、大学生の就職率が上向き始めたころからだったと記憶しています。就職氷河期で苦しんだ上の世代を見て、その下の世代に「ああなるのは嫌だ、安定した仕事が見つかるなら、その機会は逃さない方がいい」という刷り込みがされたのかな、と考えています。

日本社会は、いろんな意味で「遊び」を許さない社会だなあと、長く旅をしていてよく感じます。小学校から大学までストレートで進み、大学在学中から就職活動にあけくれ、大学を卒業したらすぐに就職。それから定年まで、毎年合計1ヶ月あるかないかの休暇をやりくりしながら働くのが理想。人生の空白期間というのは悪とみなされ、人生に空白期間があると途端に就職・転職に不利になります。学生でもない、働いてもいない人は後ろ指を指されます。

もちろん勉強や仕事にやりがいを見出して、毎日充実した人生を送っている人もたくさんいると思います。でも、全員がそうではないでしょうし、そうである必要もないのです。勉強や仕事以外で人間的に成長したり、心が豊かになれる機会がもっとあってもいいと思うのです。

多くの欧米諸国にはギャップイヤーというシステムがあり、これは大学を卒業してから就職先で働きはじめるまでの、何ヶ月の空白期間のことです。大体半年ほどのことが多いようですが、この期間に若者たちは世界を旅行したり、海外でボランティアやインターンシップを経験したり、自分の国では経験できないことを経験し了見を広げようとします。

また、仕事を辞めて旅をしている若い外国人にもたくさん出会いました。仕事を辞めて長期で世界を旅するなどと聞くと、日本ではもう世捨て人扱いですが、彼らにはまったく悲壮感はありません。ひとつのステージから次のステージへの過渡期に自分の好きなことをしているだけ、または旅をすることで何かインスピレーションを得て、次の仕事なりこの先の人生に生かしていこうというポジティブな考え方の人ばかりです。こういう人たちはやはり経験も豊富で、話をしていて面白いです。

「遊び」のない人生を送っていても、将来には保障がない時代です。それであればどんどん旅をして、経験値を上げて視野を広げて、自分の可能性を見つけていくのが新しいリスクヘッジかもしれません。

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ライタープロフィール

そま ちひろさん/女性/年齢:30代/中南米(2013年現在)/フリーライターおよび翻訳業。お気に入りの国はインド、住んでみたい国はスペイン、そして現在は南米を縦横断中、という矛盾だらけの人生を満喫しています。著作に「ヘラクレイトスの水」(大宰治賞2009収録)。