人生を変える旅をするには
「若いうちの旅のススメ」「旅は新しい自分を見つけるチャンス」「知っておきたい旅のリスク」「現実逃避が人生を変えるきっかけになることも?」「旅に出ようか迷っている人へ」などを紹介します。

旅は新しい自分を見つけるチャンス

2018/01/09

例えばインドで停電が起こり、ろうそくに顔を寄せ合って誰かと話をする夜。例えばボリビアの富士山の標高の街で、震えながら浴びる安宿の水シャワー。例えばギリシアの地中海の島で、お釣りを勝手にチップとして懐に入れてしまうウェイター。

日本にいたら起こるはずがない出来事の数々。「だから海外は嫌なんだ、すべてが快適な日本にいるのが一番いい」と言う人がいるのも無理はないと思います。

でももしかしたらそう言う人たちは、日本の快適さと引き換えに、彼らの中にある滞在的な可能性や、隠れた美点を見逃しているのかもしれません。

英語が苦手だと思っていた人が、旅をする中でたくさんの外国人に出会います。各国からの旅行者同士の共通言語は英語。なんとか彼らとコミュニケーションをとろうとするうちに、全然できなかった英語がなんとか意思疎通できるまでに上達する。良く聞く話です。

また、日本では気弱でなかなか自己主張ができなかった人が、日本人と見ればぼったくろうとする人たちばかりのアジア諸国を旅して、押し出しが良くなって帰ってきたのも見ました。日本にいるときと同じように、相手に流されて曖昧な返事をしていたらひどい目に遭ったらしく、それから「自己主張せねば!」と一念発起して、欲しいものは欲しい、嫌なことは嫌、とはっきり言うようにしたのだそうです。はっきり自己主張するのってこんなに気持ちいいことなのか、としきりに感動していました。

それからこれはわたしの例ですが、中南米ではとにかく我慢強くなることを学びました。ラテンの人たちは、効率とは無縁の世界で生きています。スーパーのレジでお釣りの準備が悪く、レジの人がお釣りを取りに行って5分くらい返ってこない。食堂に入って座って、店の人が注文を取りに来てくれるまで永遠のように待たされる。支払いをお願いしてからまたしばらく経って、「お会計?」と再度聞かれる、などは日常茶飯事です。

でも怒ったら負け、といつも自分に言い聞かせています。変えられないことを変えようとするところに苦しみが生まれる、とブッダも言っています。それをしみじみ納得できるようにまでなりました。

旅の大きな醍醐味。それは新しい自分の発見と成長を目の当たりにできることです。

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ライタープロフィール

そま ちひろさん/女性/年齢:30代/中南米(2013年現在)/フリーライターおよび翻訳業。お気に入りの国はインド、住んでみたい国はスペイン、そして現在は南米を縦横断中、という矛盾だらけの人生を満喫しています。著作に「ヘラクレイトスの水」(大宰治賞2009収録)。