初めての作詞入門 初級編
「詩と詞の違い」「タイトルの決め方」「テーマの決め方」「ストーリーの決め方」「歌詞のサビに就いて」など初めての作詞入門を紹介します。

歌詞のサビに就いて

2013/02/11

歌詞のサビとは、舞台で言えば山場の見せ所にあたり「いよ〜!千両役者!日本一!」と声が掛かる部分に当たります。歌手にとっても一番の聞かせどころで、歌詞にはテーマの訴求が込められています。

サビとは、ワサビのサビの事で「ピリッと利かせる」という意味が込められています。寿司や刺身のワサビ、そして蕎麦つゆにもワサビがないと、間がぬけて味に締りがありませんね。

ポップスでは、サビを頭に持ってきたり、中間に持ってきたり、最後に持ってきたりします。ポップスの編曲で構成が変る場合もありますが、曲先といわれる「はめ込み詞」が主流だからです。

歌謡曲では、歌詞を凝縮し文字数が少ない為に、構成とバランスを考えて中間に持っていきます。漢字の「山」と同じ構成になっています。

サビには、タイトル、テーマ、ストーリー、登場人物、状況設定など、複合的な訴求力を要求されます。先ずは、歌詞のどの部分がサビに当たるのかを知る為に、ヒット曲の歌詞をチェックすると勉強になります。

歌詞の出だしに就いて説明した文章から、下記の3点を抜粋してみました。「沖に群れ飛ぶ鴎さえ 日暮れにゃ港へ帰るのに あんた今頃何処の海」これにサビを付けるとしたら、「飛沫に晒した凍てつく肌を 温めてあげるよ 飛んで来い」と思いつきました。

沖に群れ飛ぶ鴎さえ
日暮れにゃ港へ帰るのに
あんた今頃何処の海
飛沫に晒した凍てつく肌を
温めてあげるよ 飛んで来い

漁師町で暮らす女性の気質と、男性に対する思いを訴求できればと思いました。

「賽の河原を積み上げて 会いに来ました恐山 イタコの口寄せ あなたが見える」安易に創作しましたが、「会いたくて 恋しくて 刹那くて 愛しくて あなたの声が聞きたくて」また安易になってしまいました。

賽の河原を積み上げて
会いに来ました恐山
イタコの口寄せ あなたが見える
会いたくて 恋しくて
刹那くて 愛しくて あなたの声が聞きたくて

語尾を全て訴求にする事で、徐々に盛り上がりを見せてくれると思います。

「暖簾おろして 提灯消して 今夜もあんたを待ちぼうけ」どうも私は女唄が多いようです。「ごんごう徳利ころがして 涙でスキと書いてみた」となってしまいました。

暖簾おろして 提灯消して
今夜もあんたを待ちぼうけ
ごんごう徳利ころがして
涙でスキと書いてみた

五合徳利をごんごう徳利に変えて、女性の強気と後半の弱気を表現してみました。サビは、主人公の心の訴求を表現する必要があります。なぜならば、歌手が一番高い声を張り上げ、声を伸ばすからです。歌詞の活字で訴求力を表現するのではなく、歌手と主人公が一体化し、感情を高める事が必要です。

作詞家の中には、サビの部分だけを書き溜めている作家も沢山います。サビには、キラリと輝き、燐とした艶が欲しいですね。

追記 歌詞は全て原稿を執筆中の即興詞です。


森田一夫音楽クリニック
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ライタープロフィール

Jack天野/男性/年齢:50代/セブ島在住/13歳より横須賀の将校クラブでドラマーデビュー、20歳でハモンドオルガン奏者、その後ピアノの弾き語りとしてファイアットリージェンシーと契約し東南アジア各国のホテルロービーピアニストを務めました。ちょっとマイナーな部分も含めて、楽しい記事を書きたいと思います。宜しくお願いします。