仕事体験記
こんな仕事を経験しました。聞いてみたかった仕事体験記。

テレビ大道具の仕事体験記

2012/04/02

一時期、大道具のアルバイトをしていたことがあります。大道具とは、テレビや映画、舞台のセットの設営をする仕事。大工のように釘を打つ、というのが分かりやすいイメージだと思うけど、実際はずいぶんと大工とは違っている。

アルバイトのきっかけはネットで募集広告を見たからです。いやはや、アルバイト感覚でやる仕事じゃないね。もちろん、他のアルバイトと同じように責任や専門知識などを求められることは少ないのだけれど、そのくせ現場での仕事では一緒に働くプロの大道具と同じことを求められたりする。腕がない、報酬が少ない、だけどアルバイトとして扱われない、まぁ働く環境としてはなんらうま味がないよね。

正直に言えば、けっこう軽いノリだったんです、応募したのは。学生だったのですが、それまで経験していたアルバイト、たとえば飲食店や引っ越し業と系統の違ったものをやってみたいな、というほどの考えです。一緒に働いていたアルバイトの人間の中には、俳優を目指していたり、またはテレビなどの華やかな世界に憧れていたりといった人間もいましたが、自分はと言えば、そういった直接的な理由があったわけではない。なので、しんどいことがあるとすっかり心が折れそうになるわけです。「もっと楽に稼げる方法なんて他にいくらでもあるよな」といった感じで。

それでも、一年半ほどは続けました。単純に、根性無しと思われたくない一心で。多少ミーハーなところもあるので、当初は芸能人を見かけると興奮したりもしたのだけど、仕事になれるにつれて、そんなことどうでもいいよと思うようにもなりました。それに、珍しいと好きとでは当然感動の度合いも違うので、言うなれば、そんな人と会えるということは大道具という職業にとって大した特典にはならないということです。 大道具を経験してよかったことは唯一、手先が器用になったことでしょうか。おかげで、日曜大工程度であれば、その辺の人間よりうまく立ちまわれる腕がつきました(笑)。

ライタープロフィール

横浜ホームズさん/男性/年齢:30代/横浜在住、福岡から横浜に来てはや10数年。もはや博多っ子と浜っ子の境を見失う30男。美しいものが好き。だけど醜いものはもっと好き。人生、味がある方がいいよね。