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スペイン／牛たちの勝利 ー闘牛ー
2012/11/04
闘牛。言わずと知れたスペインの名物ですが、目の前で動物が殺されるところを見るなんて悪趣味、というような理由から、抵抗がある人も多いようです。ベテランの闘牛士ならキレイに決まるけれど、うまくいかないと牛が苦しみながら死んで行くらしいですし、最近では動物愛護団体の反発もあり、影を薄めつつある、なんて噂も耳にしたことがあります。
そんな中、スペインといえば闘牛じゃない？そのくらいのノリとイメージで、闘牛場へと足を運んだ私。会場は思ったよりも人でいっぱいでした。日本でいうところの、相撲のような感覚なのでしょうか。
だだ広い砂の円形場。その真ん中に、ぽつりと向かいあう、2つの影。牛と闘牛士。
闘牛士は、赤い布をぱっと広げる。牛は、赤い色の布に向かって攻める。突進する。牛のほとばしる筋肉と闘志が熱気になって、客席まで伝わってくるようでした。
闘牛士は布を掲げながら、何度も牛をよけていく。一度突進すると、牛は勢いを失って、ピタっととまる。するとまた闘牛士に挑発される。急激に突進する。そしてまたぴたりと止まる・・・。なんだか、牛が不思議な生き物に見えていました。いったい、何を考えて突進しているんだろう・・・
考えれば考えるほど、私には、牛がとても哲学的な生き物に思えてなりませんでした。牛は、もしかしたら人間の考えていることを、よくわかっているんじゃないだろうか。見せ物にされていることをわかっていながら、突進しているんじゃないか・・と。
と、意識が戻ると、最後の時。闘牛士が、華麗に牛に一突きをする。牛は、見事に横に倒れる。ずしん、と、音がしたような気がした。そして、牛は動かなかった。見事な一撃だった。おれは、わかってやっていたんだからな。立派な最後だったんだからな。牛の声が聞こえたような気がした。
たしかに、動物を殺す残酷なエンタテイメントショーといってしまえば、聞き心地が悪いかもしれない。人間のエゴだ、牛がかわいそうだ、そんな風に思えるかもしれない。しかし、なんだろう、闘牛が終わったあと、私には、牛の方が、人間に勝っているんだという気がしてなりませんでした。
中花香さん／女性／年齢：20代／鎌倉出身／会社員／海外旅行、バイオリン演奏、ライブなどが趣味。好きなものは映像、絵本、仏像などです。