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イタリア/あわれみの傑作、ピエタ

2012/10/21

イタリア・・というよりは、バチカン市国での話です。

世界で最も小さい国、バチカン。国の面積は、ディズニーランドよりも小さいと言われますが、それでいて世界遺産の宝庫でもあります。ミケランジェロの超大作「最後の審判」が描かれたシスティーナ礼拝堂、カトリック教会の総本山であるサン・ピエトロ大聖堂。ルネサンス期の巨匠たちが腕をふるった美術作品を思う存分楽しむことができます。

天地創造やアダムとイブが楽園から追放する場面などを描いた天井、キリストが最後の審判を行う正面の壁画、聖書の世界と物語に満ち溢れたシスティーナ礼拝堂は圧巻で、行った人なら必ず記憶に残っているのではないでしょうか。

さて、そんな名品そろいの中で私が一番心に残る出会いをしたのは、「ピエタ」と呼ばれる像。サン・ピエトロ大聖堂内部の一角に置かれたこの像は、ミケランジェロの代表作のひとつでもありますが、実際にバチカンまで足を運んだことのない人には、もしかしたらそこまでなじみがないかもしれません。色鮮やかな要素はなく、決して華やかな題材ではないからです。

しかし、実際に見てみると、なぜでしょう、このピエタが、一番何かを訴えているように、私には感じられました。

「ピエタ」とは、イタリア語で「慈悲」「あわれみ」の意味。キリスト教の宗教画のテーマのひとつで、死後に十字架から降ろされたキリストを、母マリアが抱きかかえているシーンです。

暗い聖堂の中を進んでいくと見えてくる、ぼんやりと照らされたピエタ。その空間だけは、とても静かでした。崩れ落ちるキリストの肉体的な表現、マリアの静かな表情、衣服に落ちる影・・全てがリアルで美しく、見ているだけで悲しみとあわれみの気持ちで満ちるような感覚に襲われていました。そして、華やかなだけではない作品の持つ力のようなものを、この時強く認識しました。

イタリアでは、このバチカンはもちろんフィレンチェなど、ルネサンス美術をこれでもかというほど堪能することができます。有名な作品だけではなく、少し脇にそれた作品も、ゆっくり時間をかけて、楽しんでみてください。日本やアジアの美的感覚とは少し違った、その時代のリアルの形が、感じられるはずです。

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ライタープロフィール

中花香さん/女性/年齢:20代/鎌倉出身/会社員/海外旅行、バイオリン演奏、ライブなどが趣味。好きなものは映像、絵本、仏像などです。