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インド/過酷な荒野に浮かぶ幻想 ― ラダック

2012/10/16

インド ラダック

インド ラダック

インドのチベットと言われる場所があります。パキスタンとの国境近く、カシミール州のラダックと呼ばれるエリアです。カシミールといえば、紛争地域。危険なイメージを持っている人も多いかと思いますが、ラダックは観光客に恵まれた、安全な町です。インドの暑さに疲れたり、あるいは生きたチベット文化が今だに根づいている場所として興味を持ったりして、やって来る人が多いようです。

さて、ラダックの中心都市レーは標高3000mほどに位置しています。
レーまでは、デリーから飛行機で数時間ほどで行くことができますが、私が選んだのは、陸路。中継地点のマナリという避暑地からレーまでの道のりが、絶景と評判だったからです。また、山を登って移動しているのだ、という実感を味わいたかったのもあります。

しかし、その旅路は、まさに過酷そのもの。
まず、マナリから毎日発車する乗り合いジープに乗り込みます。午前2時か3時くらい、深夜に町から出発すると、20時間ほどジープに乗り続け、レーに到着するのは、夜の10時から11時くらい。今考えると、車に乗っている時間を考えるだけでも、腰痛が起こりそうです…。

更に、道という道なんてない荒地と、一気に高度が上がる標高差が、体力をみるみるうちに奪っていきます。標高4000mに近づいたあたりからは植物も生えず、大きな岩や石がゴロゴロと転がるだけ。車は上下左右に激しく揺れ、頭は天井にガンガン当たる。標高5000mのポイントを2回も越えなければならず、高山病の頭痛がひどい。昼と夜の温度差も激しい。私は、あっという間に弱ってしまいました。

それでも、ここには、確かに、絶景という以上の何かがあるのを感じていました。
酸素が薄い。太陽がまぶしい。圧倒的に人間がどうしようもない大地が、周りには広がっている・・・朦朧とした頭で景色を眺めていると、だんだん、世界が違って見えてくるような気がしていました。この世界では、何が起きても不思議じゃない。たとえば、空を龍が飛んでいたり、神々が降りてきて、突然太陽と月を奪ってしまったり、乳の海を攪拌したり・・神話やおとぎ話の世界が、現実のことのように、感じられていたのです。本当に、この道中の間だけ。

気づくと、夜になり、町に到着していました。レーの人々は優しく、私を迎え入れてくれ、同時に、私は現実のリアルな世界に戻っていました。道中で見た幻想は、いったい何だったんだろう。今思えば、町へいたるまでの道中が、何かの修行だったのかもしれません。

飛行機を使うのは簡単ですが、ぜひ体力のあるうちに、山を越えて、聖なる町レーを目指してみませんか?きっと、目に見えない何かが、見えるはず。

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ライタープロフィール

中花香さん/女性/年齢:20代/鎌倉出身/会社員/海外旅行、バイオリン演奏、ライブなどが趣味。好きなものは映像、絵本、仏像などです。