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インド/死を美しく包む河、ガンジス

2012/12/07

インド ガンジス川

インド ガンジス川

ガンジス川の夕日

ガンジス川の夕日

インド。この国の魅力について色々と考えてみたものの、語らずにはいられない町といえば、やっぱりバナラシしかない、と思う。 いまやテレビでも多く特集されているし、インドが前よりも行きやすい国になったことから、バナラシを訪れたことのある人は多いと思いますが、それは、一番インドが凝縮された場所だからに違いないでしょう。

密集する人々、腐臭がするゴミだめ、狭い路地を行き交う牛、皮膚がただれ明らかに病気に感染している野犬、祈りの儀式・・あと、この町には、何があるのか。河。河しかない。ただ河があり、生活がある。起きて河へ行き、河を眺め、宿に帰る。ここでは、それだけしかすることなんて、ない。

私は、舟漕ぎのババと、毎日ガンジスを眺めていた。
バナラシでは、河をボートで渡る船漕ぎたちがたくさんいる。みな客引きに必死で、次々と観光客に食らいついてくる。そんな中でも、営業熱心ではないし、言い値で舟に乗せてくれるババを、私は信頼していた。ただ、途中で疲れて漕ぐのをやめてしまい、代わりに私が漕ぐことになったりするのだけれど・・

舟に乗ると、ババは、何も言わなくても、人間の死体の溜まる中州へと向かった。死臭を嫌がる人もいるし、禁忌でもあるからか、舟乗りの中には積極的に近づかない者もいる。でも、なぜかババは、そこへ自らいつも向かうのだった。

目を凝らすと、たくさんの骸骨が、ゴミに混じって見えてくる。うっという匂いがすると思うと、必ず河にはしたいが流れている。中には、牛の巨大な死骸もあったりする。

そんな中で、私は一人の死体に出会った。中年の男のようで、もう半分くらいは腐りかけていた。朝日に照らされて、死体を浸す水は、きらきらと輝いていた。鳥たちが、体をつついて食べていた。

そして、なぜだろう。私は、その人をとてもきれいだと思った。泥臭い、汚ならしい、怖いもの・・普通なら不愉快に思うそれを、なぜか、本当にきれいだと思ったのだった。少し涙が出た。この町では、生きることと死ぬことは一緒のことで、日常なのだった。私は、祈りの花を、河に投げた。

インドに行って、人生観変わった?とよく聞かれる。でも、そんなに単純な話ではないような気がしてしまう。ただ、あの河を思い出すとき、私はいつも、大切なものを心に取り戻せるような気持ちになるのだった。

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ライタープロフィール

中花香さん/女性/年齢:20代/鎌倉出身/会社員/海外旅行、バイオリン演奏、ライブなどが趣味。好きなものは映像、絵本、仏像などです。