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ケーキ嫌いの祖父が美味しいといったデコレーションケーキ:福井県
2011/09/12
我が家では、誕生日には必ずデコレーションケーキを買ってきます。家族5人と、ときには祖父母を合わせた7人でお祝いをします。しかしアルコール好きの祖父は、いつも「ケーキはちょっと」といって、全く食べないのです。これまでも色んなお店でケーキを買ってきて勧めてみたのですが、どれもみな全滅でした。
6月のある日。それはもう20代になってしまった長女の誕生日でした。その日の朝、長女は仕事帰りに自分でデコレーションケーキを買ってくるからと言って仕事に出かけました。
私と妻がお誕生会の準備をして自宅で待っていると、まず次女が帰宅しました。しばらくすると長男がリビングに入ってきて、「おじいちゃんとおばあちゃんは?」と、不思議そうに訊いてきました。「座敷にいるよ」と、私は答えました。祖父母は午後から我が家にやってきて、2人でテレビを観ていたのです。
リビングのテーブルには御馳走がずらりと並び、あとは真ん中にデコレーションケーキを置くだけでした。「どこで買ってくるのかしら?」妻がいいました。それから心配そうに「おじいちゃん今年は食べられるかしら」と、言葉を付け足しました。
長女が大きな箱を持って帰ってきました。その中からデコレーションケーキを出してテーブルに置きました。なんと、そのケーキには、アンパンマンの絵が描いてありました。「頼めば色んな絵を描いてくれるの」嬉しそうにイスに座りました。長女は保育園のころ、アンパンマンが大好きでした。
7人全員がテーブルについて誕生会が始まりました。「これはね、アイドルつるかめっていうケーキ屋さんで買ってきたの。そこのパティシエさんは日本最大のケーキコンテストで金賞をとったことがあって、甘いものが駄目だっていう人も食べられるほど美味しいって評判なの。だからきっと、おじいちゃんも食べられると思うわ」ケーキを切り分けました。
「はいおじいちゃん」長女が祖父の前にケーキの皿を置きました。祖父がフォークを口に運びました。それからすぐに、「ん、おいしい」とつぶやきました。一瞬みんなが顔を見合わせました。
全員でケーキを食べて、「たしかに」「これならおじいちゃんも食べられる筈だ」口々にいいました。「これからお誕生会のケーキはこれに決まりね」妻がいうと、ケーキを食べていた祖父が、うんうんと頷きました。
アイドルつるかめ
キイチロウ/男性/50代/福井県在住/ごく普通の仕事をしていて、ごく普通の考え方をする、ごく普通の趣味を持った、ごく普通の外見の人間です。ただ他の人よりも少しだけ、人間ウォッチングに優れていると自分では思っています。