心に残る一冊
お気に入りの世界観、人生を変えた一冊、何度も読み返してしまう本を紹介します。

息椎名 誠さんの中では珍しい私小説

2010/08/02





皆さんも一つは愛読書をお持ちのはずですが、本好きには愛読書が多くて困りますね。読むと人に勧めたいのも、本好きのおせっかいかもしれません。

私の心に残る1冊は椎名 誠さんの「岳物語」、「続岳物語」です。椎名さんの本はエッセイや、旅行記(怪しい探検隊)SFなどが有名ですが「岳物語」、「続岳物語」は椎名 誠さんの中では珍しい私小説です。

内容は、椎名さんの息子さんの成長記録ですが、私の子どもと照らし合わせながら読みました。自分の子どもが育ち、自我が芽生え親から離れて行く過程を椎名 誠さんらしい読みやすい文章で書かれています。

今では小学校の教科書にも取り上げられているので、読んだ方や題名をご存知の方も多くいるはずです。自分の息子「岳」と体当たりで正面から向かいあい、自分の息子の成長を自分の体で感じながら書かれた小説で、そこには自分の子どもに対する遠慮や媚は一切ありません。

子どもと怪我をするまでプロレスをする場面、ほとんどの家庭では子どもが怪我をするまで、プロレスはしません。母親が止めに入るでしょう。

でも椎名家は違います。「おとう」に負けた岳は、次は「おとう」に勝とうとして、体を鍛え努力します。

これが子どもとしての親との接し方でもあるのです。岳は「おとう」を負かすことが夢でした。

そんな岳も年ごろを迎え、「おとう」から自然と離れていきます。読者としては、その後の岳との生活を描いた「続々岳物語」を期待したのですが、息子から断られて誕生していませんが、最近出た岳物語には、息子さん岳の書いた文章が寄せられています。

短い文章ですが、息子から見た父親「椎名 誠」が書かれています。この文章だけでも一冊分の価値があると感じるのは、私だけでしょうか。

もう一冊これは、旅物語ですが、「パタゴニア-あるいは風とタンポポの物語り」もお勧め出来る一冊です。パタゴニアの美しい風景と、自分の精神的な病、そして夫婦の絆がパタゴニアの風景とは裏腹に、重苦し文章でつづられていますが、人間の人として、また夫婦としてのあり方を考えさせられる本です。

岳物語 (集英社文庫)
続 岳物語 (集英社文庫)
パタゴニア あるいは風とタンポポの物語り (集英社文庫)

ライタープロフィール

You/男性/年齢:30代/北海道在住/食べ歩きが大好きな30代男性です。日頃世界各国の話題に関心があります。